総需要総供給分析(AD-AS分析)

IS-LM分析

 IS-LM分析では、財市場貨幣市場から決定される総需要に限定して議論しました。

 しかし、労働市場物価の変動がいまいち掴めないモデルでした。

 そこで、IS-LM分析労働市場を導入し、需要サイドと供給サイドを分析。均衡物価を導出します。

1、総需要曲線(AD曲線)

(1)財市場と貨幣市場で決まる国民所得

 財市場貨幣市場で決まる国民所得は、IS-LM分析によって導くことができます。

 これが総需要になります。

(2)物価変動の影響

 ここで物価が下落したとしましょう。

 物価下落は、実質マネーサプライM/Pを上昇させます。

 いわば、金融緩和と同じです。

 したがって、LM曲線が下シフトし、国民所得が上昇します。

 ここでは、利子率の下落と、投資喚起による総需要増大が起こっています。

(3)総需要曲線

 したがって、物価下落は総需要の増大をもたらします。

 これを図示すると、次のような右下がりの総需要曲線が描けるわけです。

2、総供給曲線(AS曲線)

(1)総供給はどう決まるか

 生産要素には資本労働がありますが、短期的には資本を変えることはできません。

 ここでは、労働に注目します。

 労働が増えれば国内総生産は増え、労働が減れば国内総生産は減ります。

(2)労働市場の基本

 労働市場では、実質賃金w/pによって労働需要と労働供給が調整され雇用が決定されます。

 なお、労働市場についてはつぎのように考えます。

  • 名目賃金には下方硬直性がある。つまり、労働組合や最低賃金法のためにある一定ラインよりは下がらない
  • 名目賃金は上方伸縮性がある。つまり、人が足りない時はどんどん賃金をあげてでも人を集めようとする

 これを覚えておいてください。

(2)物価が高い場合

 さて物価が高いとき、どうなるでしょうか?

 物価が高いので、実質賃金(=名目賃金÷物価)は低くなります。

 けれども、企業のニーズ(労働需要)が大きくなり、人材の争奪戦が行われます。

 名目賃金は上昇し、最終的に均衡点に達します。

 ですので、物価が高い場合、雇用は一定です。

(3)物価が低い場合

 物価が低い場合はどうでしょうか?

 実質賃金(=名目賃金÷物価)が高くなるので、企業のニーズ(労働需要)は小さくなります。

 もし名目賃金を下げることができるなら、需給均衡を達成できますが、名目賃金には下方硬直性があります。

 ですので、結局、実質賃金は高止まりします。

 この結果、失業が発生します。

(4)総供給曲線(AS曲線)

 総供給曲線はどうかけるでしょうか?

 物価が高いとき、物価が少しずつ上がっていくと、名目賃金も少しずつ上がるので、雇用は一定です。

 結果、国内総生産は変わらないです。

 このとき、完全雇用になります。

 物価が低いとき、物価が少しずつ上がっていくと、実質賃金が少しずつ下がるので、雇用が増えていきます。

 結果、国内総生産は上がります。

 このとき、不完全雇用になります。

3、物価と国内総生産の決定

 最終的に、物価と国内総生産は次のように決定されます。

 これが財市場・貨幣市場・労働市場を睨んだマクロ経済モデルの斬泰造です。

4、経済政策

(1)総需要管理政策

 ここで、財政政策金融政策の効果を確かめます。

 物価が変動しないとして考えます。

 すると、拡張財政・金融緩和は総需要を増大させますので、総需要曲線の右シフトになります。

 下図のような場合、多少のインフレをともないつつも、完全雇用が達成されることがわかります。

 一方で、過度な総需要管理政策は、国内総生産を全くあげない一方で、インフレを起こしてしまいます。

 したがって、好景気で完全雇用が達成されているときは、拡張財政や金融緩和をすべきではありません。

(2)供給サイドへの政策

 ただし、総需要管理政策では、国内総生産を一定以上に伸ばすことができません。

 あくまで完全雇用を達成する手段です。

 国内総生産を増大させるには何が必要でしょうか?

 では、総供給曲線をシフトさせることを考えます。

 総供給曲線を右シフトさせるには、労働市場において労働供給曲線(余暇の限界不効用曲線)と、労働需要曲線(労働の限界生産性)を右シフトさせる必要があります。

 余暇の限界不効用は、個人の感じ方ですから政府は変えることはできません。

 ここで重要になるのは、労働の生産性上昇です。

 労働需要曲線が上にシフトすることで、完全雇用とそれに伴う実質賃金が上昇します。

 すると、これはつぎのように総供給曲線の右シフトで表すことができます。

 下の図では

  • 国内総生産の上昇
  • 失業の発生
  • 物価下落

が発生しています。

 このようにして、労働生産性をあげることで国内総生産を増大させることができます。