メーカーはサプライチェーンを多元化し、転職希望者は市場価値を高め、抜け目のない若い男女はキープを作る。これらは、BATNA戦略から発する具体策である。
交渉成立には、交渉案がBATNAより好ましいことが必要だ。BATNA(バトナ)とは、交渉決裂時に残る最良の代案を意味し、Best Alternative to a Negotiated Agreementの略である。例えば、《私》が500万円のA社転職オファーと400万円の現職残留を選択できる形で、B社と交渉しているとしよう。このとき、BATNAは500万円だ。B社は《私》に500万円より大きな金額を提示しなければ、交渉が成立しない。
交渉では事前にBATNAを好ましくしておくのが、《私》が従うべき鉄則だ。交渉は席についてから始まるが、交渉力は席につく前に決まる。余裕とは、BATNAが十分に好ましい者の態度である。切羽詰まっているとは、BATNAが好ましくない者の態度である。
【追記】
・BATNAは合意可能な最低ラインであるがゆえに、交渉妥結と交渉決裂の判断基準となる。
・交渉初期は、自分のBATNAより高い提案をして、より有利な合意になることを狙うべきだ。
・最終的に、相手の提案がBATNAより好ましければ、交渉は妥結すべきである。
・最終的に、相手の提案がBATNAより好ましくなければ、交渉は決裂すべきである。
・最初からBATNAを好ましくしておくBATNA戦略が有効である。
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