代替効果と所得効果/ 価格変化はどう需要に影響するか?

消費者理論

 価格の変化はどう需要に影響を与えるのでしょうか?

 これを合理的な消費行動としてとらえると、代替効果と所得効果に分けることができます。

 ここでは、無差別曲線をもちいた議論、スルツキー分解を用いた議論を用います。

1、無差別曲線での代替効果と所得効果

 ここでは、2財モデルで考えていきます。

(1)予算制約の下での効用最大化とは?

 人は合理的に行動するとします。

 合理的とは、予算制約下での効用最大化を行うということです。

 このとき、最適消費点はつぎのように表すことができます。

予算制約下の効用最大化問題を2財モデルのグラフによって図示した画像

(2)価格変化による需要変化の表現

 さて、ここで1財の価格が値上がりしたとします。

 すると下のように予算制約線の傾きが急になります。

 こうして、新しい最適消費点が形成されます。

予算制約下の効用最大化問題を2財モデルのグラフによって図示し、1財が値上がりした場合の予算制約線と新しい最適消費点を図示した画像

 つまり、1財の価格変化による1財の消費量の変化は、次のように表すことができます。

 これはどのように分解できるでしょうか?

予算制約下の効用最大化問題を2財モデルのグラフによって図示し、1財が値上がりした場合としていない場合の最適消費点を比較した画像

(4)効用を維持するための適切な補償

 消費者は、価格変化しても効用をなるべく変えないようにします。

 もし効用を維持できるように適切な補償金が与えられるとすると、赤い予算制約線をかけます。

予算制約下の効用最大化問題を2財モデルのグラフによって図示し、1財が値上がりした場合における費用最小化問題をといたときの予算制約線を特別に強調した画像

(5)代替効果と所得効果

 上の赤い予算制約線無差別曲線の交点が補償需要です。

 元々の最適消費から補償需要への変化を、代替効果といいます。

 さきほどは、効用が保てるように誰かが補償してくれましたが、実際には補償してくれません。

 予算の額面は変わっていませんから、補償されるべき額は「実質的な所得の減少」といえます。

 この実質的な所得の減少による効果を、所得効果といいます。

 代替効果と所得効果をまとめると次のように考えることができます。

価格変化(全部変化)を所得効果と代替効果にスルツキー分解した画像

2、スルツキー分解からの代替効果と所得効果

 今度は数学的に分析してみましょう。

 この分析をスルツキー分解と言います。

(1)需要関数と補償需要関数

 まず、はじめに消費者の行動を次のような関数で表します。

 はじめの関数は需要関数、次の関数は補償需要関数といいます。

需要関数と補償需要関数の定義

 さて、最適消費点では、効用最大化費用最小化を同時に達成しているはずですから、つぎのようにかけます。

 これを双対性といいます。

消費の双対性

 さらにいえば、予算Iを最小支出関数とみなすことができます。

 最小支出関数は、ある価格体系と効用を入力すると、その効用を達成するために最低限必要な支出を出力する関数です。

 これを考慮すると、次のようになります。

(4)スルツキー分解

 上記の議論を総合して、i財の価格変化による影響を分析しましょう。

 これをスルツキー分解といいます。

3、さらなる議論

 結論としては、価格変化による需要の変化は次のように整理できます。

  • 代替効果:(適切な補償があったとして)効用を維持した消費変化
  • 所得効果:適切な補償がない中で効用最大化した消費変化

です。

 代替効果と所得効果について補足があります。

(1)代替効果はマイナスorゼロ

 i財の価格が上がると、割安な他の財を買います。

 結果、i財の消費は絶対に増えません。

 代替効果はマイナスorゼロです。

(2)所得効果は正常財ならマイナス、下級財ならプラス

 i財の価格が上がっても適切な補償はされませんから、実質的な所得が下がります。

 所得が減ると、財の消費が増えるか減るかは、財によって異なります。

 美味いけど高いご飯などの正常財なら、所得が下がると消費は減りますから、所得効果はマイナスです。

 不味いけど安いご飯などの下級財なら、所得が下がると消費は増えますから、所得効果はプラスです。

(3)全部効果

 とはいえ、所得効果の絶対値はそこまで大きくありません。

 したがって、ふつうは全部効果=代替効果+所得効果は、マイナスになります。

 これは価格と需要のグラフである需要曲線が右下がりである理由になります。

(4)ギッフェン財の理論的予測

 次のような理論的予測もすることができます。

 所得効果はプラスかつ絶対値が大きいという「スーパー下級財」のような財の場合、価格上昇で逆に需要が伸びます。

 これはギッフェン財といわれるもので、需要曲線は右上がりになります。

 状況としてはつぎのようなときです。

<ギッフェン財のイメージ>

ビーバー家は19世紀アイルランドの極貧都市住民です。

あまりに金がないので基本的にはジャガイモしか食べられません。

もやしにドレッシングをかけて食べるのが唯一の楽しみです。

あるとき、ジャガイモ飢饉でジャガイモが高騰しました。

エネルギー補給のためにジャガイモ消費を減らせません。(代替効果がゼロ)

かといって、もやしとドレッシングを買う余裕もなくなってしまいました。

しょうがないのでビーバー家は、ジャガイモを普段より多く買うことでせめて生活を豊かに見せようとしました。(所得効果がプラス)

このとき、ジャガイモは値上がりにもかかわらず消費が増えたので、ギッフェン財です。