5.一般均衡のモデル化/ n財経済の全体像を掴む【一般均衡】

一般均衡理論

 1財のみに絞った部分均衡理論を用いると、需要曲線供給曲線で分析することになります。

 2財モデルで考えると、無差別曲線生産可能性フロンティアを使った議論になります。

 これらの議論は、視覚的に理解でき、さまざまな示唆を与えてくれるという点で優れています。

 では、より一般性を高めてn財での経済モデルを構築するにはどうすべきでしょうか?

 ここでは、一般均衡理論からさまざまな示唆を引き出すための準備を行います。

 具体的には「価格・需要・供給とはなにか?」「消費者行動をどう捉えるべきか?」「企業行動をどう捉えるべきか?」です。

 数学の表記もあり、すこし抽象的ですが、学べば経済の全体像について目が開かれます

1、市場のモデル

(1)価格体系

 まずは市場均衡に到達するために決定的な役割を果たしてきた価格を表現しましょう。

 部分均衡理論では価格は、縦軸の数値で表せました。

 2財モデルでは、予算制約線や等利潤線の傾きとして表しました。

 しかし、n財モデルでは図形的な表現はできません。

 そのかわり、次のようにベクトルとして表記します。

 1財の価格をp1、2財の価格をp2、n財の価格をpnという具合です。

 そして、これらをまとめて価格体系と言い、「p」と表します。

(2)需要

 次は需要です。消費計画ともいえます。

 部分均衡理論では右下がりの需要曲線、2財モデルでは無差別曲線予算制約線の交点として表しました。

 こちらも、もはや図形的に表現することはできません。

 そこで

  • 価格体系p→需要x

という基本的な図式を中核に据えつつ

  • 消費者i
  • 財n

という要素を付記することで需要を表現します。

 これは次のように表現できます。

 青の価格体系pが独立変数、緑の需要xが関数名、赤のiが消費者の番号、紫のnが財の番号を意味します。

(3)供給

 次は、供給です。(最適)生産計画とも言えます。

 部分均衡理論では右上がりの供給曲線、2財モデルでは初期保有か、生産可能性フロンティアと等利潤線の交点として表しました。

 こちらも、n財モデルでは、もはや図形的に表現することはできません。

 そこで

  • 初期保有
  • 生産計画

を次のように表現します。

 まず初期保有は、下のように表記します。

 緑のω(オメガ)が初期保有を、赤のiが消費者を、紫のnが財を表現しています。

 生産計画は、次のように表します。

 青の価格体系pが独立変数、緑の生産計画yが関数名、赤のjが企業の番号、紫のnが財の番号を意味します。

(4)市場均衡の表現

 以上を踏まえると、市場均衡は次のように書くことができます。

 市場均衡とは、需要と供給が一致していることです。

 全体として一致していれば良いので、Σで消費者と企業全てを足し合わせました。

  • 需要=消費計画
  • 供給=初期保有+生産計画

と考えていることになります。

 初期保有と生産計画が入っているので、交換経済と生産経済を混ぜたパターンを想定しています。 

 これまで習ってきたどのモデルより一般性の高いモデルになっています。

2、消費者の行動

 次に、各経済主体について、深掘りしましょう。

 まずは消費者行動です。

(1)効用最大化

 消費者の行動原理は、予算制約下での効用最大化です。

 効用最大化は、予算の中で「財1の消費」「財2の消費」・・・「財nの消費」・・・「財Nの消費」から得られる効用(満足度)を最大化するという意味です。

 ただ、数式的には、効用関数uの最大化ですので、無差別曲線の2財モデルと変わりません。

(2)予算制約

 問題は予算制約式はなにかです。

 無差別曲線のときは予算は所与でしたが、今回はここから考えければいけません。

 さきほどの市場均衡の式を思い出して考えると、つぎのように書くことができます。

 ここでは、

  • 初期保有からの収入
  • 企業からの利潤配分

からの消費者iの予算制約式を作りました。

(3)初期保有と機会費用

 上の予算制約式からは、2つの疑問が湧くはずです。

  • 「労働所得はどこいったんや」
  • 「初期保有を売らない場合はどうしてるんや」

という疑問です。

 実はこの疑問は同じです。

 一般均衡理論の予算制約では「せっかく売れるのに初期保有をそのままにするのは、自分は市場に売り出してそれを自分で買っているのに等しい」と考えているのです。

 例えば、市場価値が100万円の車を初期保有しているとします。

 これを売れば、100万円がゲットできるわけです。

 けれども、車100万円を使いたいので、この利益を捨てているのです。

 保有することで発生する機会費用とも言えるでしょう。

 このように考えると、初期保有からの収入は、あくまで理論的な収入です。

 売らない場合、両辺から消去することができます。

(4)労働所得

 ここにおいて、すべての人間が平等に持っている初期保有があります。

 それは時間です。

 経済学では、時間を初期保有しており、労働として売り出すか、余暇とするかを決めると考えます。(→労働か余暇か

 余暇の値段は、時給です。

 もしあなたが1時間ゲームしたり寝たりして余暇を過ごすとき、あなたは自分自身から時間を買っているのです。

(5)消費者行動のまとめ

 いままでのことを整理すると、消費者は

  • 初期保有からの収入(労働所得を含む)
  • 企業からの利潤配分

の予算制約下で

  • 効用最大化

することで需要(消費計画)を決めているのです。

3、企業の行動

 次は企業行動です。

(1)利潤最大化

 企業の行動原理は利潤最大化です。

です。

 この利潤最大化を達成する生産計画を、最適生産計画としましょう。

(2)利潤をどう表現するか?

 では、どのように利潤を表現すべきでしょうか?

 ここで企業行動理論で、生産関数や費用関数などの面倒な議論をしていたことを思い出してください。

 しかし、いまは価格と財の生産計画しか定義されていません。

 どうしたらいいでしょうか?

 これは拍子抜けするくらい単純に考えることができます。

  • プラスの最適生産計画=産出
  • マイナスの最適生産計画=投入

と考えます。

とかけるので

  • 【利潤】
  • =【収入】ー【費用】
  • =【価格体系p】×【最適生産計画体系y】
  • =py

とシンプルに書くことができるのです。

(3)収入の分配

 では、どのように収入を分配しているでしょうか?

 まず、労働や資本や原材料に、【価格p】×【量y】を分配しています。

 我々多くの労働者の人たちはここからお金をもらっているです。

 企業的には「費用」という分類になります。

 では、一方で利潤はどう考えたらいいでしょうか?

 本来なら、お金を溜め込むということも考えられますが、ここでは企業の所有者にすべてお返しすると考えます。

 これが先ほど出てきた「利潤の配分」にあたります。

 このようにして、企業の収入は満遍なく消費者に還元され、予算制約式の一部になるのです。

4、まとめ 〜一般均衡理論の入り口〜

 さて、これで一般均衡理論の入り口が完成しました。

 たくさんの面白い考え方があったのではないでしょうか?

 そして、これを土台に様々な示唆を得ることができます。

 景色が変わるはずです。