合理的な学歴選択

 日本は学歴社会と言われますが、高学歴を目指す必要はありません。中卒、高卒、大卒、大学院卒といろんな方がいらっしゃいます。人は自分の判断において学歴を選択し、それに向けて勉強したり、しなかったりするわけです。

 では、どういう風に考えて学歴を選ぶのか? 人的資本投資の観点から考えてみます。

人生の見通し

 まずつぎのように考えます。

  • 教育を受けると、賃金が上がる
  • 教育には学費と時間がかかる
  • 定年がある

 これをグラフにすると、下図のようになります。赤が「教育ありの人」が直面する所得と費用です。緑が「教育なしの人」が直面する所得と費用です。

図1:教育を受けたかどうかで変わる所得

直接費用と機会費用

 さて、教育には学費という直接的なコストがかかりますが、それだけではありません。本来、教育を受けなければ稼げた所得が失われるという間接的なコストがかかります。この間接的なコストを機会費用と言います。

 人は青のメリットと赤のデメリットの面積(下図)を比較して、青の方が大きいと考えるなら教育を受けようと思うのです。

図2:賃金上昇と費用(=直接費用+機会費用)

割引現在価値

 さらに、「人は未来より現在の方を重視」の観点を付け加えます。なぜなら、現在のお金は、誰かに貸せば、未来に利子分が増えて返ってくるからです。例えば、利子率が1%なら、現在の100万円は、1年後の101万円と同じ価値を持ちます。ですから、現在目線でみるとき、将来の所得を「割り引き」して考える必要があります。

 将来を割り引いて考えることを、割引現在価値と言います。これを考慮すると、上図は下図のように書き換えられます。合理的な人は、下図の青と赤を比較して、教育を受けるか受けないかを決めるのです。

図3:割引現在価値(=現在を重視、未来を軽視)の導入

結論

 このように考えると、高学歴を目指すとは

  • 教育による賃金上昇が大きい
  • 教育なしで働いたときの所得が少ない
  • 学費が安い
  • 利子率が低い
  • (定年までの)人生が長い

ときの合理的な選択になるわけです。

※学びの楽しさや辛さが存在せず、入学試験がないとき、上の考え方が成り立ちます。