経済学は「合理的な人間」を想定し、理論が組み立てられます。
消費者理論でも同じです。
では、賢い消費者とは、端的に言ってどのような消費者なのでしょうか?
ちょっと、街の人に議論してもらいましょう。

「車ならトヨタ、ゲームならニンテンドーだよ」
「車もゲームもいらないよ。iPhoneがあれば十分」
「そういう問題じゃないでしょ。要は質の高い商品を買えってことさ」
「え、質悪くても安けりゃ買っていいでしょ」
「質も大事だけど、ブランドも大事よ」
な〜んて、いろんな価値観が出てきてしまいました。
では、これらを統一的に考えるにはどうしたらいいでしょうか。
ここで経済学では、効用という概念を使います。
「効用」という満足度を意味する経済学用語です。
効用は「日本製だから高い」「ブランドだから高い」というような縛りはありません。
具体的な枝葉をなくして、純粋な満足度に焦点を当てた概念です。
すると、最終的には消費とは満足するためにやっていることになりますから、「効用最大化」が消費者の課題となります。
ただし、何事にも限界があります。
消費が制約されるのは予算が有限だからです。
ですので、最終的に消費者の行動原理は
ということができます。
「な〜んだ。大したこといってないじゃないか」
と思われるかもしれません。
しかし、トヨタが〜iPhoneが〜ブランドが〜などと紛糾していた議論をすんなり収めることができます。
経済学は、「何に価値があるか」は教えてくれませんが、「それぞれの価値観をもった人々を集めると何が起こるのか」を教えてくれる学問です。
さて、では「予算制約下での効用最大化」はどのようなときに起こるのでしょうか?
それは
- 限界代替率=価格比
つまり
- 主観的交換比率=客観的交換比率
であることが必要です。
言い換えれば、「商品Aと商品Bの主観的な評価と、商品Aと商品Bの値段が同じ」であれば、効用最大化になりうるということです。
もしチケットを買うかどうかを迷ったのなら、他の商品(例えばラーメンや旅行)と比較して、何にお金を振り分けるのか考える必要があります。
また、経済学的な議論をすると、面白いことがわかります。
効用最大化していると、同時に「効用水準下での支出最小化」にもなっているということです。
これは「同じ満足なら最もコスパのよい消費をする」を意味します。
効用最大化と支出最小化の関係を双対性と言います。
<双対性と無差別曲線>
効用最大化では、次のように消費量を決定します。

支出最小化では次のように決定します。
最終的に無差別曲線と予算制約線が接しているので、両者は同時に成り立ちます。

まとめると、賢い消費者とは
で行動するとわかります。
「消費者は何を求めているのか?」についてはややもすれば、細かい話になりがちです。
それが思い込みとなり、不合理な行動に走ってしまうこともよくあります。
消費者だけに限りません。
普通の行動についても同じことが言えると思います。
そのように考えると、この消費者観とは非常に汎用性の高い行動モデルであるといえます。
僕は好きです。