2世紀のローマ帝国が舞台のグラディエーターのあらすじと、時代背景の解説です。高校世界史の勉強になるような解説をしました。
1、あらすじ
第一部(ゲルマニア)
ローマ軍将軍のマキシマスは、ゲルマニアにおいて大きな戦果をあげた。
野心を持たず誠実な彼を、時の皇帝はたいそう信頼し、密かに後継者に指名した。
しかし、野心にまみれた皇帝の息子コンモドゥスは、皇帝の意に怒り、暗殺。ローマ皇帝位を簒奪した。
この際、反逆者としてマキシマスは処刑された。
はずだった…
第二部(ヒスパニア)
実は、マキシマスは処刑の際に逃亡、生きていた。
マキシマスは奴隷商人に捕まり、スペインにて剣闘士(グラディエーター)として第二の生を送る。そして、持ち前の戦闘力でメキメキと頭角を表していた。
第三部(ローマ)
さて、このころ、大衆の心を掴むためローマ皇帝コンモドゥスは、帝都ローマにて大規模な剣闘士大会を開いていた…
映画の評価
- 映画の面白さ
これは面白い。将軍→剣闘士奴隷→皇帝と対決のストーリーは、波乱万丈。2000年公開の古い映画だけど、映像もとても綺麗。まったくしょぼくない。特に、58分45秒から流れる帝都ローマの街並みは壮観。
アカデミー賞もゲットしているし、満足できることは保証したい。
- 高校世界史お役立ち度
ゲルマニア→ヒスパニア→ローマと移るので、いろんなローマ社会が切り取られていていい。個人的には、森林のゲルマニアと乾燥するヒスパニアとローマの気候の変化も感じてほしい。ローマ帝国はなんと広大なんだ!
高校世界史で触れるべきことにもかなり触れられるし、受験生が世界史の勉強と称して見る理屈も成り立たつと思う。
- リアリティー評価
史実に従っている | |
史実をもとにしたフィクション (主人公は実在の人物がモデル、社会情勢も反映) | |
○ | 史実をもとにしたフィクション (社会情勢のみが反映) |
過去の文化を利用したフィクション | |
△ | とても脚色が多い |
風刺・寓話の要素が強い |
2、高校世界史で読む時代背景



1、時代:2世紀
2、当時の国:ゲルマニア(第一部)・ヒスパニア(第二部)・ローマ(第三部)
3、現在の国:ドイツ(第一部)・スペイン(第二部)・イタリア(第三部)
4、国際情勢:パクス=ロマーナ:広大な土地がローマ帝国領となり、平和であった。
5、国内情勢
五賢帝末期〜コンモドゥス帝期。ローマの最盛期と言われる五賢帝期は、マルクス=アウレリウス=アントニヌス帝(映画に出てくるおじいちゃん皇帝)の死で終わる。
そして、やってくるのが暴君コンモドゥスの時代である。なお、コンモドゥスは早慶レベルの難関知識。



6、ローマ建築
荘厳なコロッセウムや数々の壮大な建築物が立ち並ぶ最盛期のローマは壮観である。
これが2000年前だと信じられるだろうか。
7、大衆社会:「パンとサーカス」



皇帝は剣闘士試合を催すことで大衆の心を掴もうとした。これはローマの有力者が人気取りにする「パンとサーカス」の伝統に即している。
実際に、劇中ではパンを民衆に目がけて投げるシーンがある。
8、ローマの国家像
「皇帝派か議会派か」:映画の舞台から700年前、ローマは王を持たぬ「共和政」となり、それを伝統とした。元老院がその象徴である。これが議会派である。
しかし、200年前からローマ皇帝が出現し、強大な権力を握った。皇帝を支持するのが皇帝派である。
伝統を重んじるのであればローマは議会派であり、帝政は本来のローマの姿でないという意識が、映画の舞台でもたびたび登場する。
9、ローマの主権者:SPQR
マキシマスの肩に彫られているSPQRだが、これは「ローマの元老院と人民」の意味。古代ローマの主権者であり、その栄光と誇りである。
受験には出ないが、ローマが好きなら覚えておくべき。
3、事実と虚構
重大な虚構
- マキシマスの存在
主人公のマキシマスだが、実際には存在しない。
- コンモドゥスの父親暗殺
実際には暗殺していないという。
事実
- コンモドゥスが剣闘士に暗殺されたこと
実際に、コンモドゥスは剣闘士ナルキッソスに暗殺された。ただし、場所はコロッセオではなく寝室である。
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