美しき西洋建築史2500年を概観する

 人類が滅びても残る文明の遺産って建築だと思うんです。そして、建築の中でもひときわ輝いて見えるのがヨーロッパ建築です。

 そんなヨーロッパ建築をギリシア→ローマ→ビザンツ→ロマネスク→ゴシック→ルネサンス→バロック→新古典→歴史主義→近現代、とざっくり概観してしまおうというのがこの記事です。

 それではどうぞ!

しまうま

東大生/ 欲しいものは大局観。目指すは全体最適。|経済学の考え方が好きです。

1、ギリシア建築

(1)パルテノン神殿

パルテノン神殿(Serendigity, 1978, パブリック・ドメイン, ○)(Fliker)

名称:パルテノン神殿

場所:ギリシア・アテネ

様式:ドーリア式

評価:ギリシア建築の最高傑作と言われます。

(2)ローマ建築への影響

 ギリシア文化はローマ文化に大きな影響を与えました。それがローマのコロッセオにも現れています。

 ギリシア建築には3つの様式がありますが、

  • ドーリア式:荘厳。柱の上部が質素
  • イオニア式:優美。柱の上部がクルンと巻いている
  • コリント式:繊細。柱の上部に複雑な飾りがついている

 ローマのコロッセオの第一層(下)がドーリア式、第二層がイオニア式、第三層(上)がコリント式の様式となってます。

2、ローマ建築

(1)フォロ・ロマーノ

フォロロマーノ(Stefan Bauer, 2005, CC BY-SA 2.5, ○)(wiki)

場所の意味:ローマの政治経済の中心地

最盛期:壮麗な建築物が立ち並んでいました

ローマ以後:もともと湿地であり、帝国の滅亡後、沼に沈みました。中世になると忘れ去られ、放牧場と化します。このため、むしろ保存状態は良かったのですが、ルネサンス期になると建材として利用され、破壊されてしまいました。

(2)パンテオン

パンテオン(Photo by Adam Wood on Unsplash, ○)

初代の建設:前25年(消失)

建築意図:アウグストゥスの神殿にする予定でしたが、反発が予想されたのでローマの神々を祀る「万神殿」となりました。

二代目の建築:118年から128年 (五賢帝ハドリアヌス)

特徴:ドーム建築。2000年前にも関わらず、コンクリートが使われ、非常に高い技術が用いられています。

ローマ以後:608年にキリスト教神殿となりました。

保存状態:改築されづらい構造で2000年前の姿を留めています。

(3)コロッセオ

コロッセオ(Diliff, 2007, CC BY-SA 2.5, ○)(wiki)

建築:70〜80年

建築意図:ローマ大火やローマ内戦で傷ついたローマ市民を、競技場の建設で懐柔するため。まさに「パンとサーカス」の精神。

ローマ以後:建材として利用。そのため、外周の半分は失われました

使用技術:ローマン・コンクリート (現代のコンクリより強度があり、長持ちする)

コロッセオ東京ドーム
面積2.4万平方メートル4.6万平方メートル
高さ48m56m
収容人数4〜6万人5万5000人
特殊装備模擬海戦が可能空気圧で張った膜が屋根

3、ビザンツ建築

(1)ハギア=ソフィア大聖堂

ハギア=ソフィア(Photo by Zen zeee on Unsplash, ○)

 ハギア=ソフィアは、ビザンツ建築の最高傑作です。イスラーム化してから、モスクとなりました。

特徴:巨大なドーム

名前の意味:「聖なる叡智」

工期:5年11ヶ月

当時の用途:東方正教の総本山(コンスタンティノープル総主教座)

場所:イスタンブール (当時のコンスタンティノープル)

(2)聖マルコ大聖堂

聖マルコ大聖堂(パブリック・ドメイン, ○)(wiki)

 11世紀に建築が始まり、400年かけて建築された聖堂。ドーム建築・モザイク壁画の典型的なビザンツ様式。

場所:ヴェネツィア

4、ロマネスク建築

(1)ピサ大聖堂

ピサ大聖堂(José Luiz Bernardes Ribeiro, 2014, CC, ○)(wiki)

背景:11世紀イタリアの都市共和国ピサの繁栄を物語っています。

場所:イタリアのピサ

(2)クリュニー大聖堂 

クリニュー大聖堂(パブリック・ドメイン, ○)(wiki)

評価:あまり有名ではありませんが、バチカンのサン=ピエトロ大聖堂 が完成するまでヨーロッパ最大の宗教建築物でした。

過去1:クリュニー修道院は、堕落した聖職者を批判する中世の修道院運動のリーダーであり、修道院1200、修道士2万を管轄下におく巨大組織でした。

過去2:フランス革命は、第一身分である聖職者、第二身分である貴族の特権階級の打破を目的としていました。このため、クリュニー大聖堂は破壊され、いまでは最盛期の10%ほどしか残っていません。

5、ゴシック建築

(1)ケルン大聖堂

ケルン大聖堂(Thomas Wolf, 2008, CC BY-SA 3.0, ○)(wiki)

名前:ケルン大聖堂

場所:ドイツ・ケルン

工期:1248年〜16世紀(宗教改革で中断)、1842年〜1880年

工期について:600年以上かかりましたが、当初の設計がほぼそのまま反映されています

高さ:157m (ワシントン記念塔ができるまで世界一の高層建築)

年間維持費用:約12億円(一時、危機遺産にも認定された)

(2)ノートルダム大聖堂

ノートルダム大聖堂(パリ) (Photo by Sebastian on Unsplash, ○)

名前:ノートルダム大聖堂(パリ)

工期:1163年〜1225年(その後も続けられ最終的に1345年に竣工)

特徴:初期ゴシック建築なので、ロマネスク建築の要素も入っています。

ノートルダム大聖堂の2019年の火事(Wandrille de Préville, 2019, CC BY-SA 4.0, ○)(wiki)

事件:2019年、火事がおきて尖塔が崩落しました。

(3)ミラノ大聖堂

ミラノ大聖堂(Photo by Mo k a on Unsplash, ○)

名称:ミラノ大聖堂

役割:世界最大人口のカトリック教区のミラノ大司教がいる教会

工期:1386年〜1813年(最後はナポレオンが支援)

第二次世界大戦:連合国の判断で爆撃が行われませんでした

6、ルネサンス建築

(1)サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂

サンタ=マリア=デル=フィオーレ大聖堂(MarcusObal, 2008, CC BY-SA 3.0, ○)(wiki)

場所:フィレンツェ

建築家:ブルネレスキ(←ドーム建築を担った)など

工期:1296年から1462年

(2)サン=ピエトロ大聖堂

サン=ピエトロ大聖堂(Photo by Kévin et Laurianne Langlais on Unsplash, ○)

場所:バチカン(イタリア半島)

  • 紀元後70年ごろ:使徒ペテロが殉教。伝承によると、その埋葬地にサン=ピエトロ大聖堂がある
  • 4世紀:初代サン=ピエトロ大聖堂が建てたれた
  • 800年:フランク王国カールに西ローマ皇帝冠を授ける場所となる
  • 1377年:ローマ教皇の座所になる(古代・中世を通じて教皇はラテラノ大聖堂にいたが、アヴィニョン捕囚で荒廃したため、座所を移した)
  • 1506年:現在のサン=ピエトロ大聖堂の起工式
  • 1593年:ドーム完成
  • 1626年:竣工式
  • 現在:カトリックの総本山

7、バロック建築

(1)ヴェルサイユ宮殿

ヴェルサイユ宮殿(Photo by Anthony Choren on Unsplash, ○)

名称:ヴェルサイユ宮殿

場所:ヴェルサイユ(パリから20km)

建築意図:絶対王政全盛期のルイ14世の威光を示すため

建築年:1682年

歴史的出来事1:1789年、ヴェルサイユ行進:フランス革命初期に市民がフランス王を引きずり出して、パリへ連行した事件。

歴史的出来事2:1871年、ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世の即位式:フランス人にとって屈辱的でした

歴史的出来事3:1919年、ヴェルサイユ条約:ドイツの第一次世界大戦敗北に関する国際条約。

(2)セント=ポール大聖堂

セント=ポール大聖堂(Photo by Alex Tai on Unsplash, ○)

名称:セント=ポール大聖堂

場所:ロンドン

建築指示:ステュアート朝チャールス2世

完成:1710年

役割:イギリス国教会ロンドン教区の主教座聖堂

8、ロココ建築

(1)サンスーシ宮殿

サンスーシ宮殿(Mbzt, 2013, CC BY-SA 3.0, ○)(wiki)

名称:サンスーシ宮殿

場所:ドイツ・ポツダム

建築指示:プロイセン王フリードリヒ2世

工期:1745〜1747年

特徴:こじんまりとしているがその分、内装が華麗。

時代:オーストリア継承戦争中に建てられました。プロイセンの余裕がうかがえます。

※オーストリア継承戦争(1740~48年):プロイセンがオーストリアを攻めた戦争。

(2)シェーンブルン宮殿

シェーンブルン宮殿(Thomas Wolf,2014, CC BY-SA 3.0 de, ○)(wiki)

名称:シェーンブルン宮殿

場所:オーストリア・ウィーン

建築意図:オーストリア王家は神聖ローマ皇帝の継承家でした。しかし、伸長するフランス王が豪壮なヴェルサイユ宮殿を建築。これに対抗して作られました。

完成:1750年ごろ、マリア・テレジアの治世

小ネタ:御前演奏会にのぞんだ6歳のモーツァルトは、磨き上げられた床で転んでしまいます。そのモーツァルトを助け起こしたのが、7歳のマリー・アントワネットでした。モーツァルトは「やさしいね。僕のお嫁さんにしてあげる」といい、キスまでしたと伝わっています。モーツァルトはクラシック音楽の巨匠に、マリー・アントワネットはフランス革命で処刑されることになります。

(3)エカチェリーナ宮殿

冬宮(Photo by Helen Ast on Unsplash, ○)

名称:エカチェリーナ宮殿

場所:ロシア・サンクトペテルブルク

建築意図:ロシア皇帝エカチェリーナ1世の避暑用の宮殿

(※世界史で重要な女帝はエカチェリーナ2世)

工期:1754年~1762年

日本人の来訪者:1791年、鎖国中の日本から大黒屋光太夫が訪れ、エカチェリーナ2世に謁見しました

9、新古典派建築

(1)パリのパンテオン

パリのパンテオン(Photo by Kreshen on Unsplash, ○)

名称:パリのパンテオン

工期:1758〜1792年

工事末期:フランス革命(1789〜1792年)の最中。このため、キリスト教教会堂として建てられる予定だったが、「フランスの偉人」を祀る建物に変更されました

場所:フランス・パリ

科学史:1851年にフーコーの振り子実験が行われ、地球の自転が証明されました

似ている建物:古代ギリシアのパンテオン、ロンドンのセント=ポール大聖堂

(2)エトワール凱旋門

エトワール凱旋門(Photo by Sung Shin on Unsplash, ○)

場所:フランス・パリ

工期:1806〜1836年

建築意図:ナポレオンの戦勝記念

都市景観的な意義:放射状のパリの道路の中心に位置します

似ている建物:古代ローマの凱旋門

(3)大英博物館

大英博物館(Ham, 2007, CC BY-SA 3.0, ○)(wiki)

場所:イギリス・ロンドン

開館:1759年

世界的観光地:世界最大の博物館。800万点が収集されています

問題:所蔵品は大英帝国時代に収集されているため、現代に残る帝国主義の遺物と言えます。旧植民地の国々から返還要求がなされています。ただ、世界の文物を一箇所で観たい観光客や研究者のためになっている上、途上国の戦乱から文化財破壊を守る側面もあり、問題は単純ではありません。

10、歴史主義建築

(1)イギリス国会議事堂

イギリス国会議議事堂(Photo by Marcin Nowak on Unsplash, ○)

名称:イギリス国会議事堂

場所:ロンドン

様式:ゴシック=リヴァイヴァル

別名:ウェストミンスター宮殿

工期:1840〜1868年

最近の動向:老朽化により国会議事堂の移転が決まりました。早くて2025年の予定。

(2) タワーブリッジ

タワーブリッジ(Photo by Piotr Guzik on Unsplash, ○)

名称:タワーブリッジ

場所:ロンドン

様式:ゴシック=リヴァイヴァル

工期:1886〜1894年

建築意図:当時、世界一のロンドン港を利用する船舶が航行できるように、動く橋が建設された。

(3) 慶應義塾大学図書館・旧館

慶應図書館休館(Kakidai, 2007, CC BY-SA 4.0, ○)(wiki)

名称:慶應義塾大学図書館旧館

場所:東京

様式:ゴシック=リヴァイヴァル

完成:1912年

(4) 東京駅

東京駅(Wikipedia user -Wpcpey, 2019, CC BY 4.0, ○)(wiki)

名称:東京駅

工期:1908〜1914年、復元工事(2007年〜2012年)

様式:ゴシック様式、ルネサンス様式などの諸説あり

建築意図:東京駅の建設

(5) チェコの国民劇場

国民劇場(Che, 2005, CC BY-SA 2.5, ○)(wiki)

名称:国民劇場

様式:ネオ=ルネサンス

場所:チェコ・プラハ

工期:1868〜1881年

建築意図:チェコ語の公演が行われる劇場を作るため。チェコ人の寄付で作られました

時代背景:オーストリア帝国は、1867年、アウスグライヒでハンガリー人に譲歩しオーストリア=ハンガリー二重帝国とした。これに伴って帝国第3の民族チェコ人のナショナリズムが高まりました。チェコ人は「三重帝国」を夢見ましたが、その願いは叶いませんでした。

(6) イギリスの旧ロルチャイルド邸

旧ロスチャイルド邸 (Mattlever, 2007, CC BY-SA 3.0, ○)(wiki)

名称:旧ロスチャイルド邸

ロスチャイルドとは?:18世紀のドイツで成功して世界に名を轟かす銀行系の財閥となった家。

様式:ネオ=ルネサンス

工期:1877〜1883年

現在:ナショナルトラストが所有

(7) ルーブル宮殿

ルーブル宮殿(Photo by Shubhagata Sengupta on Unsplash, ○)

名称:ルーブル宮殿の新館

(※真ん中のピラミッド は1989年に追加された)

様式:ネオ=バロック

場所:パリ

ルーブル宮殿とは?:歴代フランス王宮。中世より増改築が進められました。ネオ=バロックは、ナポレオン3世の治世のもの。

(8) 赤坂迎賓館

赤坂迎賓館(Kakidai, 2016, CC BY-SA 4.0, ○)(wiki)

名称:赤坂迎賓館

様式:ネオ=バロック

場所:東京

完成:1909年

建築意図:皇太子殿下のお住まい(=東宮御所)

現在:1967年に外国要人を招く場所として整備されることが決まりました。

11、近現代建築

(1) 水晶宮

水晶宮( Read & Co. Engravers & Printers, 1851, パブリックドメイン, ○)(wiki)

名称:水晶宮

場所:イギリス・ロンドン

特徴:鉄骨とガラスで作られた建物

建築意図:第一回万国博覧会(1851年)でイギリスの工業力を世界に見せつけるため。

(2) エッフェル塔

エッフェル塔(Photo by Drew Coffman on Unsplash, ○)

名称:エッフェル塔

場所:フランス・パリ

建築目的:第四回万国博覧会(フランス革命100周年の1889年)

特徴:鉄骨だけで作られた高層建築(324m)。それまで、200年以上にわたり、150m前後であった世界一高い建物を一気に追い抜かしました。

工期:1887〜1889年

工事の特徴:少数精鋭主義をとり、死者は1人のみでした。

エッフェル塔の評価:当初、「鉄骨が剥き出しで美しくない」という批判も多かったです。しかし、現在はパリのシンボルとなっています。

(3) エンパイヤ=ステート=ビル

エンパイヤ=ステート=ビル(Photo by Chris Barbalis on Unsplash, ○)

名称:エンパイヤー=ステートビル

場所:ニューヨーク・アメリカ合衆国

工期:1929〜1931年

特徴:高さが443mであり40年間「世界一高いビル」の座を守りました。

建築後:完成が世界恐慌直後であり、空室が目立ちました。このため、エンプティー(空の)=ステート(状態)=ビルと揶揄された過去を持ちます。

(4) 東京都庁

東京都庁本庁舎(Photo by Fumiaki Hayashi on Unsplash, ○)

名称:東京都庁

場所:日本・東京

建築家:丹下健三

工期:1988〜1990年

高さ:243m

建築意図:丸の内の旧都庁が老朽化したため、新都庁が建設されました。

時代背景:バブル期であり、「バブルの塔」と揶揄されました。高い建築物を作ったことで神の怒りを買った「バベルの塔」をもじっています。

評価:パリのノートルダム大聖堂を引用しているポストモダン建築と言われます。

(5) ブルジュ・ハリファ

ドバイの光景(Photo by ZQ Lee on Unsplash, ○)

名称:ブルジュ=ハリファ

場所:ドバイ・アラブ首長国

工期:2004〜2010年

特徴:高さが828m。台北101の509mを抜いて世界一高いビルとなりました。

背景:オイルマネー

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