四畳半神話大系/陰キャ京大生と、無意義な学生生活

名作アニメ主義

理想のキャンパスライフと現実

「名作アニメ入門」シリーズ第四弾である。
諸君らには四畳半神話体系をご紹介しよう。
主人公は京都大学のインキャ大学生だ。

インキャ…

 さて、諸君らに問いたい。貴君が大学生なら理想のキャンパスライフとはなんであったか。貴女が受験生ならどんなキャンパスライフを夢見ているか。

 勉学に励むのもよし。部活やサークルに精を出すのもよし。お仕事の真似事をするのもよし。結婚前の最後の機会と、不純異性交遊に励むのもよいだろう。各人奮って、青春に思い出を書き記そうではないか。

 だが、青春を謳歌できる者がいるのと同様に、有限な青春を怠惰と惰眠に費やしていく不器用な者も多い。むしろ、こちらの方が多数派かもしれない。それは、天下に名高い京大生とて同じこと。

 四畳半神話大系とは、その類の主人公「私」の物語である。 

主人公「私」〜こじらせ京大生〜

 さて、何故、「私」が主人公たり得るのか。物語でどのような立ち回りをするかはこの際置いておこう。その上で、この問いに答えるならば、「『私』の独白が延々と続くから」で異論はない筈だ。

この文章読むの疲れる

 去ろうとする者たちよ。待たれよ。

 「私」の自分語りには一見する価値あり。

 彼の自分語りは、文体・こじらせ具合・事の顛末てんまつ全てが面白い。

 さて、その『私』はどのような人物か?どんな生活を送っているのか?

 事は一回生の新入生勧誘に始まり3回生の夏に終わるが、青春の1ページに添えるべき布石をことごとく踏み外して、きらびやかな学生生活とは真逆の世界に足を突っ込んでいく。

 なぜ、このようになったのか。それは明々白々である。彼には会話の中に身を投じるだけの社交性が身についていなかったのだ。

 もちろん、京大生の彼の論理的思考力と記憶力は常人を凌駕する。しかし、柔軟な社交性と学業成績にはあまり関係は見られない。話が通じることと、話ができることは別の能力なのである。

 京大が非社交的な連中の巣窟であれば、彼も大手をふってキャンパスを歩けたであろう。しかし、京都大学といえ、社交的な者は多いのだ。彼はその中で自分の居場所を、サークルの隅にしか見つけることができなかった。

 そこで、彼は一人の悪友と出会う。小津だ。

悪友「小津」・ヒロイン「明石さん」

 小津は京大工学部電気電子工学科の同回生。1回生初期から「私」とは懇意にする。不気味な容貌と醸し出される雰囲気は到底人を寄せ付けるものではない…かのように見えるが、数多くのサークルや団体に軽快にネットワークを広げるコミュ強である。

 小津は私と対照的である。

 というのも、「有意義な学生生活を送りたい」と思いつつ、送れず悶々とするのに対して、小津無意義な学生生活全力で楽しんでいる

 例えば、こんなエピソードがある。

小津と知り合ってからの私は安井金比羅宮(※)もかくやとサークル内に張り巡らされた紅い糸を切って切って切りまくった。こうした工作活動に関して小津は天才的であり、およそ破廉恥な噂なら知らぬことはないという独自の情報網を駆使して、私があぐらをまくそばから火をつけて回り、有る事無い事吹聴して常にサークル内に修羅場の炎が燃え盛るという彼好みの環境を作り上げた。まさに悪の権化にふさわしいホモ・サピエンスの面汚しである。

(※京都・東山にある神社。別称:縁切り神社)

アニメ第1話前半

クズ野郎じゃねえか

 ここまで読んで、読者諸君は一片のかけらも救いようのない「私」に哀れみの目を向けるだろう。

 では、聞こう。今、貴方に想い人はいるか。

 有意義な学生生活とは何かを延々と考える「私」にも、仲の良い女性がいる「明石さん」だ。

 明石さんは京大工学部建築学科の2回生。歯に衣着せぬ物言いで、常人からは距離を置かれている。彼女の休日の予定を聞いた男子大学生に「なんでそんなこと貴方に言わなければいけないの?」と率直にいうのを目撃して以来、「私」は明石さんを応援している。明石さんはいわゆる鳥人間に取り組むバードマンサークルで、優秀な設計士として活躍している。端的に言って有意義な学生生活を送っている。

 「私:非充実感×無意義」⇄「小津:充実感×無意義」

 「私:無意義×男」⇄「明石さん:有意義×女」

というメインキャラクター構成だ。面白くない筈ないであろう。

あらすじとテーマ

 さて、では作品のテーマは一体なんであろう?

それは「学生生活に意味を見出せない大学生が、どう考えるべきか?」だ。

ストーリーはパラレルワールドものであり、1回生のときにどのサークルに入るかで世界線が決定される。

具体的には

第1話:テニスサークル「キューピット」
第2話:映画サークル「MISOGI」
第3話:サイクリング同好会「ソレイユ」
第4話:8回生樋口師匠の弟子
第5話:ソフトボールサークル「ほんわか」


第6話:英会話サークル「ジョインイングリッシュ」
第7話:「ヒーローショー同好会」
第8話:読書サークル「(SEA)海」
 ※6~8話:3サークルを兼サーするので同じ世界線


第9話:秘密機関「福猫飯店」
第10話:ノンサー(※)(四畳半の自室に引きこもる)
第11話:第10話の続き
※ノンサー=ノンサークル:サークルに一つも入っていない状態

 各話では上のようなサークルに所属することになる。しかし、どこに行っても彼は後悔の念にとらわれる。

 テーマに対する作品の答えは、9~11話に用意されている。そこまでぜひ見て欲しい。

え〜ちょっとそんな時間ない

ならば、このテーマにも通ずる17世紀の偉人の名言を引用して終わりとしよう

今ある快楽が偽りであるという感じと、今ない快楽のむなしさに対する無知とが、定めなさの原因となる

パスカル、『パンセ』前田陽一・由木康訳

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PVはこちら!

THE TATAMI GALAXY-NoitaminA Animation-【Fuji TV Official】
THE TATAMI GALAXY – NoitaminA Animetion- 【Fuji TV Official】

あとがき

編集後記(No.16)

数学爆死で京大落ちたンゴ(2019/11/26)(2019/12/20更新)

参考資料

・森見登美彦『四畳半神話大系』角川文庫、平成20年

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