経済政策の目標は完全雇用国民所得を達成して、非自発的失業をゼロにすることです。
では、国民所得はどのように決定するのでしょうか?
財市場のみに注目した国民所得の決定はすでにやりましたが、これには金融面が考慮されていません。
財市場と貨幣市場を同時に分析する経済モデルがIS-LM分析です。
政策立案や報道でなされている経済観は、主にIS-LM分析が用いられています。
1、財市場の均衡(IS曲線)
利子率が上昇した場合、国民所得(国内総生産)はどう変化するでしょうか?
利子率が高いと、お金を借りても元が取れるような有望な投資案件が少なくなります。
ですので、利子率が上昇すると、投資は減少します。(投資の限界効率理論)
ところで総需要は、次のように表すことができます。

ですので、投資の減少は45度分析によれば次のように国民所得(国内総生産)を減少させます。

したがって、財市場のみに目を向けると、利子率と国民所得の関係は(3)のようなIS曲線で表せます。


2、貨幣市場の均衡(LM曲線)
流動性選好説によれば、貨幣需要はつぎのように表せます。

ここで、国民所得が上昇した場合、利子率はどのように変化するかを考えてみます。
国民所得の上昇は取引需要を増大させます。
つまり、貨幣需要のグラフを右シフトさせます。

このとき、貨幣市場では超過需要が発生し、均衡を保つために利子率が上昇します。

いままでの議論をまとめると、次のようにLM曲線として表せます。


3、国民所得の決定(IS-LM分析)
財市場と貨幣市場が均衡する点で、利子率と国民所得が決定します。
この点はIS曲線とLM曲線の交点として表すことができます。

IS-LM分析の全体像を図示すると、次のようになります。

4、失業の理論化と処方箋
さて、ここで完全雇用国民所得を思い出します。
非自発的失業がゼロになる経済規模のことです。
IS -LM分析では、財市場と貨幣市場で国民所得が決定されることが明らかになりました。
したがって、次のとき、国民所得は完全雇用国民所得を安定的に下回ります。

失業を解決しようと言うメカニズムは働かないのです。
どうしたらいいでしょうか?
IS曲線かLM曲線のシフトをする必要があります。
これから解説しますが、
が必要になっているとわかるわけです。