日本は財政状況が世界最悪と言われ、慢性的な財政赤字と膨大な国債が問題になっています。
これには利益誘導や非効率な出費もあるとは思いますが、そもそも財政出動にはどのような意味があるのでしょうか?
ミクロ経済学的に政府が果たすべき役割は次の3つです。
- 所得の再分配(租税と社会保障)
- 公共財の提供(公共サービス、治安、国防)
- 競争市場の維持(公正取引委員会)
しかし、マクロ経済学ではこれに加えて
- 国民所得の増大(経済成長政策)
- 失業問題の解決(景気対策)
- インフレ率の管理(物価安定策)
を課題とします。
ここでは失業問題の解決策を考えます。
1、拡張財政による総需要創出
現在の国民所得が完全雇用国民所得に達していないとき、失業が発生します。
では、どのように国民所得を増やすべきでしょうか?
(1)総需要
(閉鎖経済での)財市場では、総需要=消費+投資+政府支出です。
ケインズ型消費関数を考えると、つぎのように総需要を表現できます。

(2)拡張財政
ここで拡張財政をすると、政府支出Gが増えて、総需要が上にシフトします。

(3)国内総生産の増加
拡張財政で総需要を押し上げると、次の図のように財市場の均衡点が移動します。
このようにして、完全雇用国民所得まで財政出動を続ければいいのです。

2、財政政策の重要性
ここで財政政策の重要性を考えます。
(1)現実世界での政府支出の存在感
ここで一部の方は「政府支出で何が変わるのか」と思われるかもしれません。
しかし、下の統計をみると、GDPに占める政府財政の割合はかなり大きいことがわかります。
財政政策が経済に与える影響は大きいのです。

(2)乗数効果による高い効果
また、政府支出増加は、それ以上の国内総生産の増加を生むことが知られています。
これは乗数効果とよばれる現象です。
拡張財政した分の国内総生産が増えたとしても、超過需要の状態が続きます。
超過需要が解消されるまで国内総生産は伸びるので、乗数効果が発生するのです。

3、財政政策のIS-LM分析 〜クラウディング・アウトの発生〜
ここでIS-LM分析を行います。
(1)拡張財政はIS曲線の右シフト
拡張財政により、国内総生産が増えます。
一方で、貨幣市場で決まる利子率は変わらないです。
ですので、財市場が均衡する利子率と国内総生産の組み合わせであるIS曲線は、右シフトします。

(2)拡張財政のIS-LM分析
しかし、貨幣市場を考慮すると、利子率の上昇にともなう投資の減退が発生します。
これがクラウディング・アウトという現象です。
こうして、国内総生産は少し落ち込みます。
これを図示すると次のようになります。

拡張財政のクラウディング・アウトは次のような過程を経て、発生します。
