需要曲線のシフトはよく言及される現象ですが、これは需要曲線というモデルの限界を意味するという点で非常に重要です。
これについて、わかりやすく解説します。
1、需要曲線のシフトの本質
(1)需要曲線のシフト
需要曲線のシフトとは、需要曲線が形は変わらずに位置が並行移動することを言います。
原因は、価格以外の変化です。
<例>

(2)本質:モデルの限界
さて、なんでこれが起こるのでしょうか?
一方で、景気・流行・他の財の影響などを考慮することができていません。

そして、このモデルに組み込まれていない要因は、需要曲線に不規則なゆらぎを与えます。
これが、需要曲線をシフトさせる原因であるのです。
それぞれの例について具体的にみていきましょう。
2、上下左右シフトの意味
(1)右シフト:需要増大を数量に反映する
価格以外の要因によって需要が増えるような変化が起きた場合、需要曲線は右シフトします。
同じ価格でも需要が増えるからです。
価格以外の変化が数量に反映されているので、数量調整のパターンです。

(2)上シフト:需要増加を価格上昇で打ち消す
需要が増えているとき、価格をあげることで需要増加分を打ち消すことができます。
例えば、需要が100個のときの前は価格100円でちょうど良かったのが、需要が増えると価格200円でも100個買ってくれるというわけです。
これは上シフトを意味しています。
価格以外の要因が価格に反映されているので、価格調整のパターンです。

上の図で確認すると、需要曲線の右シフトと上シフトは同じ意味ですが、これはどちらも需要増加局面だからです。
(3)左シフト:需要減少を数量に反映する
同じように考えます。
価格以外の要因によって需要が減るような変化が起きた場合、需要曲線は左シフトします。
同じ価格でも需要が減るからです。
価格以外の変化が数量に反映されているので、数量調整のパターンです。

(4)左シフト:需要減少を価格下落で打ち消す
需要が減っているとき、価格を下げることで需要減少分を打ち消すことができます。
例えば、需要が100個のときの前は価格100円でちょうど良かったのが、需要が減ると価格50円でやっと100個買ってくれるというわけです。
これは需要曲線の下シフトを意味しています。
価格以外の変化が価格に反映されているので、価格調整のパターンです。

需要曲線では、左シフトと下シフトは同じ意味なのです。
上の図で確認すると、需要曲線の左シフトと下シフトは同じ意味ですが、これはどちらも需要減少局面だからです。
3、シフトの原因
需要を左右する価格以外の要因にはどんな例が考えられるでしょうか。
マーシャルの需要関数によれば、需要は
- 満足の感じ方(効用関数)
- 他の財の価格(相対価格)
- 予算(予算制約)
で決まります。
それぞれわけて考えましょう。
(1)満足の感じ方
その商品の満足度が大きくなれば需要は増えます。
例えば、うだるような夏のグラウンドで練習した後、猛烈にアイスクリームを食べたくなります。
また、人気の芸能人がおすすめする服なんかも需要が高くなります。
こんなとき、需要曲線は右へシフトします。

逆に満足度が下がってしまう場合もあります。
夏にダウンジャケットはいりません。
ぐるなびで星1.3の店には行こうとは思いません。
コロナでテレワークが盛ん時はオフィスビルの需要は減ります。
このとき、需要曲線は左へシフトします。
(2)他の財の価格
もちろん、需要はほかの商品からの影響を受けます。
例えば、コカコーラが値上がりしたら、ペプシコーラの需要は上がるでしょう。
値下がりした食パンがたくさん売れたら、ブルーベリージャムの需要は上がるでしょう。
このとき、需要曲線は右へシフトします。
(3)予算
需要は、自分がどれだけお金を使えるかからも影響を受けます。
お小遣いの変化を考えてもいいですが、一番大きいのが景気です。
景気がいいときは自分が使えるお金が増えますから、需要が大きくなります。
この時需要曲線は右へシフトします。
逆に景気が悪いときは消費を控えようとしますから、需要曲線が左シフトします。
この規模になってくると、「需要ショック」とも言います。
また、長期的には人口増大もここに入ってきます。