7.貨幣の本質はなにか?/ゼロ次同次性から考える【一般均衡】

一般均衡理論

 価格によって需要供給が決まることは今まで考えてきました。

 ただ、価格は「お金」と「財」と交換基準にすぎません。

 実のところ、お金とは何か?という本質的な問いをすることなく、お金の使い方だけ考えていたのです。

 では、改めて問います。

 お金とは何でしょうか?

1、すべての価格がt倍になった世界

 ここですべての財の価格がt倍になった世界を考えてみましょう。

 価格体系pにtをかけるので、次のように書くことができます。

 以後、これを価格体系の変化といいます。

2、企業行動の変化

 価格体系の変化によって企業行動はどのように変わるのでしょうか?

(1)利潤

 まず、企業行動は利潤最大化として説明しますから、利潤とはどのように表すかを考えます。

 企業jの利潤πは、pyとシンプルな行列式で表せます。

 これは下のように展開することができます。

 重要なのが、産出なら生産計画yはプラス、投入なら生産計画yはマイナスと考える点です。

 これによって、「マイナスの生産」と考えることで費用を処理しているのです。

(2)利潤最大化のモデル

 企業の利潤最大化をモデル化しましょう。

 実現可能な生産計画の制約条件の中で、利潤が最大化する最適生産計画を導出するのが、合理的な企業行動です。

 数学的には下のようにかけます。

(3)価格体系の変化の影響なし

 では、価格体系が変化した前と後で、利潤最大化行動は変わるのでしょうか?

 つまり、生産計画は変わるのでしょうか?

 結論を先に言えば、変わりません。

 なぜなら

3、消費者の行動

 次は価格体系の変化で消費者行動は変わるのかを調べます。

(1)予算制約

 消費者の予算制約は次のように書けます。

 まず、支出はpxです。

 次に、初期保有からの収入はpωになります。

 そして、企業からの利潤分配です。

 企業jからの利潤分配は

  • 利潤分配率×価格体系×生産計画

で、すべての企業を合計するのでΣを前に加えます。

(2)効用最大化のモデル

 さて、消費者iの合理的行動を定式化すると下のようにかけます。

 予算の制約条件のもと、消費計画で決まる効用を最大化するというモデルです。

(3)価格体系の変化の影響なし

 

 

 では、価格体系が変化した前と後で、効用最大化行動は変わるのでしょうか?

 つまり、消費計画は変わるのでしょうか?

 結論を先に言えば、変わりません。

 なぜなら

3、需給ギャップ

 企業行動と消費者行動は変わらないことはわかりました。

 では、市場の状態はどうでしょうか?

 需給ギャップは、超過需要関数で表すことができます。

 いままでの結果を反映させると次のようになります。

4、まとめ

 結論としては、すべての財の価格がt倍になっても

  • 企業行動
  • 消費者行動
  • 市場の需給ギャップ

は変わらないとなります。

 名目価格の変化は、実物経済には何も影響を与えていないのです。

5、貨幣とは何か

(1)相対価格こそが重要

 貨幣とは何でしょうか?

 価格が同時に同じだけ変化しても、実物経済に影響を与えないです。(→貨幣中立説、古典派の二分法)

 つまり、名目価格に意味はありません。

 他の価格との比較、つまり、相対価格に意味があるのです。

(2)価値尺度財としての貨幣

 ただ、相対価格にも基準があるといいです。

 その財1単位が価値1単位となるような財です。

 これを価値尺度財(ニュメレール)といいます。

 昔ですと、貝殻、金(ゴールド)ですし、刑務所ですとタバコが価値尺度財になったりします。

 これが現代日本でいう1円なのです。

 貨幣は、ハンバーバーやスマホと同じ財の一種と見なすのです。

(3)インフレ・デフレの意味

 「ちょっと待てよ。相対価格が重要っているけど、名目価格も景気に影響を与えるぞ。インフレ・デフレはどう解釈すればいいんだ?」という話になります。

 これはすべての財の価格がt倍になったのではなく、価値尺度財の価格のみが変化したのです。

 したがって、インフレ・デフレも、相対価格の変化であるのです。

(4)お金とはなにか

 結論として、お金は価値尺度財という財・サービスの一種になります。

 たしかにこれは「当たり前」といえると思います。

 しかし、ここで重要なのは、貨幣も他の多くの財と同次元の存在にすぎないということです。

 そして、真の意味で世の中を動かしているのは、相対価格です。

 貨幣はあってもなくても成立します。