3.事業参入・撤退の意思決定【企業理論】

企業理論

 企業理論でよくわからなくなるのが、限界費用曲線・平均費用曲線・平均可変費用曲線のグラフです。

 少し考えればわかりますが、紙面の関係でなかなか細かく解説しているテキストは少ないのです。

 そこで、ここではこれでもかというくらい詳しく図解しました。

1、費用の図示

(1)限界費用曲線

 限界費用曲線は、赤の曲線のように描けます。

 限界費用とは、追加的に1単位増産するときに新しくかかる費用です。

 生産性が下がっていくために増産を続けると、単位当たりコストが上がることが想定されています。

 ここに商品価格を書き込むと、下図のように限界収入・限界利潤・限界費用を描けます。

※上では、限界費用逓減の法則が常に成立している場合を考えました。ただ、下からは初期において生産性が向上し、後半になると生産性が下がっていく場合を考えます。

(2)平均費用曲線と平均可変費用曲線

 次に平均費用と平均可変費用ですが、下図のように描けます。

 先ほどと異なり、今度は前半において生産性が向上し、後半になると生産性が下がっていく場合を考えます。

 すると、前半において平均可変費用は下がり、後半になると上がっていきますので、U字カーブになります。

 ところで、

  • 費用=固定費用+可変費用

ですから

  • 平均費用(↓↑)=平均固定費用(↓)+平均可変費用(↓↑)

です。そして、増産すると、上の矢印のように増減します。

 平均固定費用が一貫して下がるのは、生産量が増えても固定費用は変わらないからです。

 その結果、下図のように平均費用曲線と平均可変費用曲線を描けます。

3、費用構造の理解

 それぞれの費用は次のような関係性を持っています。

  1. 最初の一個では限界費用=可変費用
  2. 平均可変費用の最小点を限界費用が通る
  3. 平均費用の最小点を限界費用が通る


1の理由

 1の理由は簡単です。

 限界費用は、n個からn+1個に増産したときにかかる費用。

 平均可変費用は、0個からn個まで増産したときにかかる費用の平均。

です。ここでn=1を代入すると、両者は一致します。

2と3の理由

 2と3の理由も簡単です。

 チームの平均罰点が少ないと勝ちのゲームを考えます。

 最初は人材が豊富で、初期メンバーより罰点が低い人がそこそこいますから、平均罰点はどんどんさがっていきます。(限界費用逓減のフェーズ)

 ところが、あるときより、罰点が少し高い人材も採用せざるを得なくなります。(限界費用逓増のフェーズへ)

 ただ、罰点が平均点より低い場合、まだまだチームの平均罰点は下がっていきます。

 しかし、新しく入ってきたXさんの罰点が平均罰点を超えた瞬間、平均罰点も上昇に転じます。

 このXが図でいう2と3に当たります。

 平均費用でも平均可変費用でも同じことが起こります。(グラフは平均可変費用を念頭に作りました。)

4、企業の目的関数との関係

 では、企業が経営目標とする目的関数とはどのように関係しているでしょうか?

(1)生産者余剰

 生産者余剰は、限界利潤(追加的に1単位増産で増える利潤)の合計です。

 下図を

  • 限界利潤=限界収入ー限界費用
  • 限界利潤=商品価格ー限界費用

となっていることがわかります。

 限界利潤を積み上げていくと、

  • 商品価格=限界費用

となる点で、限界費用がマイナスに転じますから、利潤最大化点は

  • 商品価格=限界費用

になります。

 そして、このときの生産者余剰は下図の黄色の面積で表せます。

 ただし、限界費用曲線には、固定費用の情報が入っていません。

 したがって、固定費用のマイナス

 したがって、生産者余剰から固定費用をマイナスしてははじめて利潤がでてくることに注意してください。

  • 生産者余剰ー固定費用=利潤

(2)利潤

 

 では、利潤はどこで図示されているのでしょうか?

  • 利潤=収入ー費用
  • 利潤=【商品価格】×【生産量】ー【平均費用】×【生産量】

です。

 利潤最大の生産量の場合の利潤は、図の黄色の面積になります。

5、損益分岐点と操業停止点

 価格から合理的な企業行動が決定されます。

(1)利潤最大化

 利潤最大化するので

  • 商品価格=限界費用

となる点まで生産を行います。

 もし参入が義務付けられ、撤退もできない場合、これが常に成り立ちます。

(2)損益分岐点

 しかし、利潤最大化の企業努力をしても、どうしても赤字になってしまうことがあります。

 企業努力を最大限しても、収入=費用となってしまう点を損益分岐点と言います。

 損益分岐点より、価格が上の場合、黒字です。

 損益分岐点より、価格が下の場合、赤字です。

 黒字がみこめるなら、企業は事業参入します。※

(※固定費用に機会費用が入っているから、このように言えます。ここでいう黒字赤字は、会計における黒字赤字とは異なります。ややこしいので、ここでは説明しません。)

(3)操業停止点

 しかし、固定費用がサンクコストの場合、もう取り返すことはできません。

 すでにお金を払ってしまっていますから!

 過去に縛られず、これから生産すると黒字になるのか赤字になるのかを考えます。

  • 収入ー可変費用

がプラスかマイナスかです。

 もしプラスなら、会計上は赤字でも生産を続けることが合理的です。

 もしマイナスなら、生産をやめた方が、つまり、撤退が合理的です。

 そして、両者を分ける収入=可変費用が操業分岐点になります。

6、グラフの意義

 このグラフの意義は、商品変動が、企業行動がどのように決定されるのかを考えることができる点です。

 企業の利潤最大化が

  • 価格=限界費用

であることも明確にわかります。

 損益分岐点と操業停止点もグラフで理解できます。

 なお、価格を固定して、生産量が企業の経営状態をどのように決定するかについては、こちらの総費用曲線を用いた分析が有効です。