日本銀行は異次元の量的緩和を行っているとのニュースが流れています。
では、そもそも日本銀行はどのように経済に影響を与えるのでしょうか?
最終的に失業問題の解決につながるまでの道筋を解説します。
1、金融政策
金融政策とは、中央銀行の通貨管理政策です。
市場のマネーをコントロールすることができます。
簡単に言えば、マネーを供給することで、お金を借りやすくし、企業による投資を促すことで、景気を活性化させようという意図を持っています。
では、それぞれについてIS-LM分析の枠組みでしっかりみていきましょう。
2、金融緩和の効果
これでは意味がわからないので、金融緩和の場合についてしっかり議論しましょう。
(1)実質マネーサプライの増加
貨幣市場では、貨幣供給=実質マネーサプライです。
実質マネーサプライは、
- 名目マネーサプライM / 物価P
です。
金融緩和は、中央銀行が名目マネーサプライを増やすことです。
結果、実質マネーサプライが増加します。
これは利子率によらず決まるので、垂直なグラフになります。

(2)利子率の減少
金融緩和で貨幣供給を増やすと、次の図のように貨幣市場の均衡点が移動します。
結果、利子率は減少します。

(3)投資の上昇
企業は有望な投資案件から順々に投資していきます。
ただ、貯蓄の収益率(利子率)より、投資の収益率(限界効率)が大きい場合にのみ投資します。
有望な投資案件を左から順にならべると下図のようになるとします。
このとき、図のように投資するしないが決まります。

もしここで利子率が下がったらどうでしょうか?
もともと有望でない投資案件にも投資するようになりますから、投資は増えます。
(4)投資増加による国民所得上昇
- 総需要=消費(Yにおうじて変化)+投資+政府支出
ですから、投資が増えると総需要が上シフトします。
この結果、国内総生産は増加するのです。

3、金融政策のIS-LM分析
ここで金融政策のIS-LM分析を行います。
(1)LM曲線の下シフト
LM曲線は、貨幣市場が均衡する利子率と国民所得の組み合わせです。
2節では、財市場に踏み込んで議論しましたが。
一旦、貨幣市場にのみ焦点を当てます。
すると、金融緩和によってマネーサプライが増えた場合
- 利子率が下落(貨幣供給の増加)
- 国民所得は一定(財市場はここでは無視)
ですから、LM曲線は下シフトします。

(2)金融政策のIS-LM分析
ここで、財市場を考慮すると、利子率の下落にともなう投資の上昇が発生します。
こうして、国内総生産は増加します。
これを図示すると次のようになります。

金融政策の実体経済への影響は次のような過程を経て、発生します。

3、無効な金融緩和(流動性の罠)
ただし、金融緩和が無効なときもあります。
これを流動性の罠といいます。
(1)利子率が最低のとき
利子率がもともと最低水準とみなされているときは、資産需要が無限大になります。

なぜでしょうか?
債券価格は長期保有した場合の魅力度で決まります。
しかし、投機家たちは長期保有するのではなく、割安のときに買い、割高のときに売ります。
利子率最低のとき債券価格は最高値をつけますので、すべての投機家が債券を売って、貨幣を手に入れようとします。
つまり、資産需要は無限大になります。
(2)貨幣需要が無限大
貨幣需要=取引需要+資産需要ですから、利子率が最低のとき、貨幣需要は無限大です。
このとき、貨幣市場の均衡点はつぎのように変化します。
金融緩和して実質マネーサプライを増やしても、利子率は下がらないのです。

(3)流動性の罠の部分
すると、下の図のオレンジの部分では、利子率は下がりません。
これが流動性の罠です。
IS-LM分析をすると、このとき金融政策が無効であることがわかります。
