公共財の最適供給条件

厚生経済学

という特徴をもつ公共財は、市場メカニズムに任せても適切に供給されません。

 一度作ったらずっと使われ続けられますし、特定の人を排除できないので「勝手に使っちゃお」というフリーライダー問題が発生します。

 ですので、企業は供給しようとしません。

 しかし、治安や国防といった公共財はないと、社会厚生的によろしくありません。

 では、どのように供給すべきでしょうか?

 これを公共財の最適供給問題といいます。

1、部分均衡の視点から「リンダール均衡」

(1)リンダール均衡のアイデア

 アイデアの一つに、リンダール均衡があります。

 これは、一人一人が公共財に「どれくらい払ってもいいか」を評価してもらって、社会的評価と費用が釣り合うところまで供給する、というものです。

 費用は「これくらい払ってもいい」と答えてもらった量を払ってもらうことで完済できます。

(2)リンダール均衡の例

 ある街区に街灯がないとします。

 街の人々は「街灯があると犯罪も起きないし、安心だから街灯は欲しい。けど、誰かが作ってくれたらそれでいいし、自分だけがお金を払って作るのは不公平だ」と思うので、街灯は作られませんでした。

 ここで町内会の出番です。

 町内会では「どれくらい街灯を設置すればいいのか?(=公共財の最適供給)」が問題になりました。

 これについて考えてみましょう。

限界評価

 ここで限界評価という概念を導入します。

 限界評価とは、財を追加的に1本増やすのに払ってもいいお金です。

 0本→1本のときは多くのお金を払ってもいいですが、5本→6本のときはあまりお金を払いたくないものです。

 たとえば、Aさん限界評価をグラフにすると次のようになります。

社会的限界評価

 もちろんAさん以外にも街に人はいます。

 ここではA〜Fさんまでいるとしましょう。

 この人たちの限界評価を足してやります。

 これが社会的限界評価です。

 これが擬似的な市場需要曲線になります。

 

発注価格と最適供給の決定

 もちろん街灯はタダで作れるわけではありません。

 限界費用を考えてやります。

  • 社会的限界評価>限界費用の量のとき

 追加的にもう一本作った方がいいです。こうしてどんどん供給を増やしていくと、

  • 限界費用=社会的限界費用となる量

が生まれます。

 これ以上作ると、むしろ作りすぎです。

 ですので、限界費用=社会的限界費用となる量が、公共財の最適供給量です。

 なお、このときに発注価格と、図のようにその負担額も決まります。

 

(3)リンダール均衡の肯定的評価

公共財の最適供給の解になっている

 リンダール均衡では、明確に最適供給量を決めることができます。

 最適供給を成立させるサミュエルソン条件(後述)も満たしています。

(思考実験としての)限界評価の簡単さ

 限界評価もつぎのようなアンケートで取ることができるので、簡単です。

(現実には難しいですがこれは後述)

街灯の本数あなたが払ってもいい金額
0→1?円
1→2?円
2→3?円
3→4?円

受益者負担の原則

 さらに、みんなが正確に申告しているなら、受益者負担の原則が保たれます。

 例えば、夜目が発達している筋肉マンならあまり街頭はいらないでしょう。

 逆に、夜遅くに子どもの送り向かいをしている女性なら街頭はとても必要です。

 このような必要度の差を考慮することができます。

(4)リンダール均衡の否定的評価

公平性の問題

 リンダール均衡には否定的な評価もあります。

 そもそも、適切な所得分配をしたあとに、限界評価を聞く必要があります。

 例えば、もし子供の送り向かいをしている母親がシングルマザーだったら、あまりお金を払うことができません。

 しかしだからと言って街灯を設置しないのは違和感を覚えます。

情報の非対称性の問題

 また、リンダール均衡にはフリーライダー問題を解決する仕組みが備わっていません。

 自分があまり払いたくないからと言って、限界評価を過少申告するかもしれないからです。

 これは政府(や町内会)が個人個人の評価を把握できないという「情報の非対称性」に起因する問題です。

 このとき、リンダール均衡の解法は成り立ちません。 

2、一般均衡の視点から「サミュエルソン条件」

 一般均衡での議論を用いて、公共財の最適供給条件を考えることもできます。

 一般均衡では、最小でも2財以上で議論し、効用最大化問題との関係で資源配分を捉えます。

 ここでは、私的財と公共財の2財が存在すると考えます。

(1)サミュエルソン条件のアイデア

 サミュエルソンは、公共財の追加的な生産のために

  1. 消費者側が失ってもいい私的財の量
  2. 生産者側が生産不能になる私的財の量

が一致するときに、公共財は最適供給されると考えました。

 では、1と2はそれぞれ何を意味しているのでしょう?

(2)生産可能性フロンティアと限界変形率

 2とは、限界変形率です。

 限界変形率とは、公共財を追加的に1単位生産するときに諦めなくてはいけない私的財の量です。

 これは図形的に理解することができます。

 生産可能性フロンティア(図の曲線部分)は、社会的に生産できる最大量の組み合わせですからこの接線の傾きが限界変形率になる。

(3)無差別曲線と限界代替率

 1とは、限界代替率です。

 限界代替率とは、効用を維持しながら、公共財(1財)を追加的に1単位消費するときに諦める私的財(2財)の量です。

 これは図形的に理解することができます。

 無差別曲線(図の曲線部分)は、社会的に生産できる最大量の組み合わせですから、この接線の傾きが限界変形率になります。

(4)サミュエルソン条件

 これらを踏まえると、

  • 消費者側が失ってもいいと考える私的財の量>生産者側が生産不能になる私的財の量
  • 消費者たちの限界代替率の和>社会における限界変形率

なら公共財を増やしていき、

  • 限界代替率MRSの和=限界変形率MRT

で公共財が最適供給されます。

 これがサミュエルソン条件です。