雇用の決定(労働市場の分析)

IS-LM分析

 マクロ経済学では雇用はどのように決定されると考えるのでしょうか?

 経済学らしく、需要供給の関係から導きます。

  • 労働市場:労働供給と労働需要が実質賃金によって調整される場所
  • 労働者:労働を提供することで賃金を得る(労働供給)
  • 企業:賃金を払うことで労働を得る(労働需要)

なお、

「労働は自分を売ってると考えるのは嫌だ」

と思われるかもしれませんが、それは違います。

 経済学では、自分の意思決定によって労働か余暇かを選ぶと考えます。(→労働か余暇か

 労働とは、人間性ではなく、余暇を売っていることにすぎません。

1、労働供給

(1)考え方

 労働者は効用を最大化しようと行動する、というところから労働供給を考えます。

 労働供給曲線とは、「このくらいの賃金なら、このくらい働いてもいい」という労働者の考えを表したものです。

 これを定式化すると、

  1. 労働の効用(賃金を得て消費できる)
  2. 労働の不効用(余暇を失う)

を比較しつつ、労働者は労働量を決めます。

(2)仮定と論法

 次の仮定を導入します。

 そして、経済学でよく使われる限界という概念を使います。

 限界とは「追加的に1単位増やす」を意味します。

 すると、追加的に労働を1単位増やしたとき、「増える効用が、減る効用より大きい」なら、労働を増やします。逆なら労働を増やさないと言えます。

(3)効用最大化

 さて、労働を増やしても、「名目賃金w÷物価p実質賃金」しか効用は増えません。

 効用はおカネで表せるとしているので、グラフの青線のように書けます。

 労働を増やすと余暇が減っていきますが、余暇を失うとどんどんしんどくなっていきます。

 ですので、限界不効用はどんどん増えていきます。

 これはオレンジの右上がりの線で表せます。

 このとき、交点の左側では労働を増やそうとしますし、交点の右側では労働を減らそうとしますから、最終的に労働供給は交点で決定します。

(4)労働供給曲線

 では、実質賃金と労働供給はどのような関係にあるでしょうか?

 上のグラフをみながら、実質賃金が上がった場合を考えてみてください。

 すると、どんどん労働供給が増えていくことがわかります。

 ですので、労働供給曲線は次のように右上がりにかくことができます。

2、労働需要

(1)考え方

 企業は利潤を最大化しようと行動する、というところから労働需要を考えます。

 労働需要曲線とは、「このくらいの賃金なら、このくらい雇いたい」という企業の考えを表したものです。

 限界概念を用いて定式化すると、

  1. 労働の限界収入(売り上げが増える)
  2. 労働の限界費用(コストが増える)

を比較しつつ、企業は雇用量を決めます。

 ここで、議論をしやすくするために、これらを物価で割ります。すると

  1. 労働の限界生産性(←売り上げを物価で割ると、生産量になる)
  2. 労働の実質賃金

の大小で、雇用が決まると言い換えることができます。

(2)利潤最大化

 なぜ物価で割ったのかというと、労働を増やすことと、生産性の減少を明確に関係づけたかったからです。

 労働を増やすと、労働者が疲れたり、監督が難しくてサボる人がでてきたり、質の悪い労働者を雇ったりしなくてはいけないので、生産性は下がっていきます。(←限界生産性逓減の法則

 これを表すと、オレンジの線になります。

 一方で、限界費用は実質賃金で一定です。

 これは青の線で表せます。

 企業は労働者が払う賃金より多くの生産性を持っていれば、どんどん雇います。

 逆に、企業は労働者が払う賃金より低い生産性しかなければば、どんどん解雇します。

 したがって、最終的に、労働需要は2直線の交点できまります。

(3)労働需要曲線

 では、実質賃金と労働需要はどのような関係にあるでしょうか?

 上のグラフをみながら、実質賃金が上がった場合を考えてみてください。

 すると、どんどん労働需要が減っていくことがわかります。

 ですので、労働需要曲線は次のように右下りにかくことができます。

3、雇用の決定

 今までの議論を総合しましょう。

 労働需要曲線は、労働者の効用最大化を表していて

 労働供給曲線は、企業の利潤最大化を表しています。

 ですので、もし市場メカニズムがしっかり働いていれば、雇用と実質賃金は交点で定まります。

 これが長期的な労働市場の状態です。

4、失業・人手不足のモデル化

 ここで失業と人手不足をモデル化しましょう。

(1)失業

 失業とは、労働供給が多すぎ、労働需要が少なすぎのことをいいます

 もしコストカットしたいなら、賃金を下げればいいです。

 賃金を1/2にすれば、リストラする必要はありません。

 しかし、労働組合が賃金下げに反対したり、最低賃金法があるために、「実質賃金の下方硬直性」があったとしましょう。

 すると、企業は価格調整ではなく、数量調整によって、コストカットしようとします。

 これが社会全体で発生すると、失業が発生します。

 ですので、経済学者は基本的に最低賃金法には反対しています。

 

(2)人手不足

 人手不足とは、労働需要が多すぎ、労働供給が少なすぎのことをいいます。

 人間は24時間しかありませんし、各分野の人材は限られています。

 すると、ある一定のラインをこえると労働供給は増えません。

 これを供給曲線で表すと、下の様になります。

 このとき、企業は実質賃金を上昇させてもいいから、労働者を確保しようとします。

 労働組合や国としても賃金UPは望ましいですから、だれも止める人はいません。

 ここで企業間で熾烈な人材獲得競争が行われ、実質賃金が上昇し、需給ギャップが解消されます。