【ナウシカ】王蟲とは?/壮大な世界観を読み解く【考察】

名作アニメ主義
1984 Studio Ghibli・H

 王蟲(オーム)とは、「風の谷のナウシカ」に登場する蟲。アニメでも十分王蟲の魅力は実感できますが、原作漫画を読むと王蟲がより重大な意味を持つことがわかります。

 王蟲は、風の谷の成り立ち腐海の意味ナウシカの寓話的な意味の中核に関わってくるのです。

1. 王蟲とは?

 王蟲オームとは、宮崎駿『風の谷のナウシカ』に登場する巨大生命体です。体長は最大で80mに達します。特徴は14個の眼。普段は青色ですが、怒りに燃えると赤色に変色します。

 王蟲は、『風の谷のナウシカ』を傑作ファンタジーに仕上げる最高の存在です。腐海の頂点・王蟲に並ぶものは、旧世界の遺物・巨神兵のみです。

1984 Studio Ghibli・H

 初出はアニメ冒頭。怒りに燃えた王蟲は、腐海をなぎ倒しながら砂漠を爆走します。非常に印象的な登場です。最初の画像はそのシーンです。

1984 Studio Ghibli・H

 また、クライマックスでは、王蟲の幼生によっておびき寄せられ、大群となって風の谷を飲み込もうとします。ここで巨神兵と一線交えるわけです。

 巨神兵に号令をかけるクシャナの「なぎ払え!」はネットの名言と化していますね。

 しかし、原作漫画を読むと少し違った姿が見えてきます。

2. 王蟲の怒り 〜大海嘯とは何か?〜

 おおばば様は言いました。

王蟲の怒りに触れてはならん

 なぜか。大海嘯だいかいしょうとなり、国が滅びるからです。

 大海嘯とは、王蟲が群れとなって暴走することです。

1984 Studio Ghibli・H

 大海嘯の結果、王蟲の群れは力つき死に至ります。さらに、王蟲の死骸を喰って、新しい菌類の森「腐海」が形成されます。

 こうして、大海嘯のあと、腐海は拡大を遂げるのです。

 実は、風の谷の成り立ちも、大海嘯が関係しています。

3. エフタルの滅亡と王蟲

 300年前、強国「エフタル」が栄えていました。

原作漫画2巻88ページ

 エフタルで内戦が勃発。硬質な外皮をもとめて、武器商人は王蟲を組織的に狩りました。これが王蟲の怒りを買い、エフタルは王蟲の大群に飲まれたのです。

 こうして、亜大陸の多くは腐海に没しました。

 エフタルの生き残りは、辺境に小さな国々を作りました。その一つが風の谷です。やがて、クシャナの祖国であるトルメキア王国に服属することになるのです。(原作漫画2巻87ページ)

4. 王蟲と腐海

 「人間 対 自然」のナウシカの世界観で、王蟲は非常に重要です。

 そもそも『風の谷のナウシカ』は、終末モノ。

 科学文明が崩壊し、汚染された土地に誕生した新しい生態系が腐海。菌類の巨大な森「腐海」は、毒性の強い「瘴気しょうき」を放出し、人類が住めない土地に作り替えます。

 一方で、腐海の深部では汚染物質が浄化されるといくという二面性を持った存在です。

1984 Studio Ghibli・H

 人間が自然を破壊する現代とは真逆の人類 対 自然」の構図です。

 わかりやすく次のように整理できます。

人類自然
巨大産業文明時代<マイナス>
汚染物質をまき散らし
自然を破壊する


<プラス>
豊かな精神文化を作る
セラミック時代終末期<マイナス>
瘴気をまき散らし
文明を破壊する


<プラス>
汚染物質を浄化する

 その攻撃的な「自然」である腐海には、むしと呼ばれる巨大昆虫が生息しています。その頂点に君臨するのが、王蟲なのです。

 王蟲は、森の守護者として意図的に行動する知的生命体もあります。念話によりコトバも操ります。

原作漫画1巻127ページ

 さらに、物語が進むと、大海嘯において王蟲は死を受け入れていることが判明します。森を守るために、命をも捧げる高貴な精神を持つのです。

5. おわりに:王蟲の圧倒的存在感のワケ

 まとめると、王蟲は「人類文明の破壊」と「高貴な精神と浄化」の二面性をもつ存在なのです。

 王蟲の魅力はこの矛盾の圧倒的存在感にあります。

<再掲>

人類自然
巨大産業文明時代<マイナス>
汚染物質をまき散らし
自然を破壊する

<プラス>
豊かな精神文を作る
セラミック時代終末期<マイナス>
瘴気をまき散らし
文明を破壊する

<プラス>
汚染物質を浄化する

 じつは、原作漫画ラストまで読めば、ナウシカ自身の二面性が表出します。ただし、それはまた別の話。

原作漫画7巻・212ページ

 ちなみに、なぜたった1000年で腐海が急激な進化を遂げた?のかは、原作を読めばわかります。これはネタバレ回避のために書きませんでした。

 ぜひ、原作を!

 何にせよ、

 宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』は、軽薄な自然破壊批判ではありません

 しっかり読み解き直すと、『風の谷のナウシカ』は子ども向けの娯楽作品から、重厚な傑作に昇華するのです。

風の谷のナウシカ 全7巻箱入りセット「トルメキア戦役バージョン」

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