要約
親ガチャ成功によって、高学歴になる確率は数倍になる可能性があります。その傾向は、超高学歴ほど顕著です。この結論は、本論で述べる前提を正しいとみなした場合に成り立ちます。
親ガチャによって高学歴になる確率が何倍になるかを、まとめた表が次です。上位0.3%の高学歴になる確率は、親ガチャに大成功すると76倍に跳ね上がります。逆に、親ガチャに小失敗すると、0.19倍となります。
親ガチャ 小失敗 | 親ガチャ 小成功 | 親ガチャ 成功 | 親ガチャ 大成功 | |
高学歴の基準 上位0.3% | 0.19 | 4.1 | 13 | 76 |
高学歴の基準 上位1% | 0.24 | 3.4 | 9.2 | 37 |
高学歴の基準 上位5% | 0.37 | 2.5 | 5.1 | 13 |
高学歴の基準 上位10% | 0.44 | 2.2 | 3.9 | 7.6 |
全体像
(1)問題の構造
問いを「親ガチャによって高学歴になる確率はどのくらい変わるのか?」と設定します。そして、問いを
①高学歴とは
②高学歴になる確率はどう決まるのか
③親ガチャとは
④親ガチャは何を決めるのか
⑤親ガチャは何を決めないのか
⑥親ガチャ成功によって、高学歴になる確率は何倍になるのか
と分解します。
(2)前提の選択
前提として①②③④⑤を選択します。
(3)論点の選択
論点として⑥を選択します。
(4)付録一覧
冗長さを避けて、可読性を上げるために、以下の内容は付録に回します。
「Rコード」
前提
①高学歴とは
高学歴とは、国民の上位n%の人が得ることのできる学歴を持っている人と定義します。
②高学歴になる確率はどう決まるのか
世界に生まれたとき、人は何者にでもなり得ます。すると、
$$高学歴になる確率=高学歴の人口割合$$
と考えることができます。
ここで、人口全体の学歴分布は、平均50、標準偏差10の正規分布に従うと仮定します。これは、偏差値とみなせます。
このとき自分が上位n%かが決まれば、偏差値が決まります。これはRで次のように求められます。例えば、n=10%のとき、偏差値62.8となります。
#上位何%か。ここでは10%と設定。自由に設定してください。
n <- 10
#上位の割合
prob_high_usual <- n/100
#偏差値の計算
50 + qnorm(1-prob_high_usual) * 10
これを図示すると、↓になります。偏差値62.8を超える濃い灰色の面積が、0.1になります。

なお、この偏差値は、大学入試の偏差値より高くなります。なぜなら、大学受験する人たちの学力レベルは高いからです。
③親ガチャとは
親ガチャとは「親の学歴や経済力などが子どもの家庭環境や学習環境ひいては人生に対する影響力が大きいにも関わらず子どもは親を選べないことをガチャに例えた状況のことを意味する表現(Weblio)」です。2021年9月にバズりました。
④親ガチャは何を決めるのか
親ガチャは、子どもの偏差値の期待値を、+a すると仮定します。例えば、a=5ならば、親ガチャで期待値がプラス5になるという具合です。
⑤親ガチャは何を決めないのか
親ガチャは、子どもの偏差値の分散を変えないと仮定します。
方法
論点は「親ガチャ成功によって、高学歴になる確率は何倍になるのか」です。この数値を親ガチャオッズと呼びましょう。
$$親ガチャオッズ=\frac{親ガチャ成功で高学歴になる確率}{通常ならば高学歴になる確率}$$
「親ガチャの成功はaがいくら以上か」「高学歴はnがいくら以上か」という点で場合分けしながら、この論点を考えます。
結果
(1)高学歴は上位10%、親ガチャで+5の場合
上位10%が高学歴で、親ガチャ成功は偏差値+5の場合を考えます。
黒は、通常の人が直面する偏差値の確率分布です。一方で、青は、親ガチャに成功した人が直面する偏差値の確率分布です。青の確率分布は、期待値がプラス5されて、頂点が偏差値55になっています。↓

そして、
・通常の人が高学歴になれる確率 = すこし青みがかった灰色の面積
・親ガチャに成功した人が高学歴になれる確率 = すこし青みがかった灰色の面積 + 青の面積
です。
親ガチャに成功した人は、通常の人よりも高学歴になる確率が高いというわけです。
(2)親ガチャオッズの計算方法
親ガチャオッズは、Rにて次のコードで計算できます。
#高学歴は上位いくらと考えるか=通常、高学歴になる確率。自由に設定してください。
prob_high_usual <- 0.1
#親ガチャによる偏差値の期待値上昇値。自由に設定してください。
family_effect <- 5
#親ガチャ成功で高学歴になる確率
prob_high_family_effect <- 1 - pnorm(50 + qnorm(1-prob_high_usual) * 10, mean=50 +family_effect, sd=10)
#親ガチャオッズ
prob_high_family_effect/prob_high_usual
上を用いると、上位10%が高学歴で、親ガチャで偏差値がプラス5した場合は
$$通常の人が高学歴になれる確率 =0.1$$
$$親ガチャに成功した人が高学歴になれる確率 =0.217$$
$$親ガチャオッズ=\frac{0.217}{0.1}=2.17$$
です。つまり、親ガチャに成功すると、高学歴になる確率は2.17倍になるというわけです。
(3)親ガチャオッズ
ここで親ガチャが、子どもの偏差値の期待値に与える効果が、次の4つ
親ガチャが偏差値の期待値に与える効果 |
偏差値マイナス5 |
偏差値プラス5 |
偏差値プラス10 |
偏差値プラス20 |
の場合を考えます。そして、
・高学歴を上位いくらと考えるか
・親ガチャオッズ
を計算すると、下表になります。
高学歴の基準 | 親ガチャ オッズ (ー5) | 親ガチャ オッズ (+5) | 親ガチャ オッズ (+10) | 親ガチャ オッズ (+20) |
上位0.3% | 0.19 | 4.1 | 13 | 76 |
上位1% | 0.24 | 3.4 | 9.2 | 37 |
上位5% | 0.37 | 2.5 | 5.1 | 13 |
上位10% | 0.44 | 2.2 | 3.9 | 7.6 |
高学歴の基準を横軸にして、縦軸に親ガチャオッズにしたグラフを作ると、下図になります。

親ガチャに成功すると、高学歴になりやすくなることがわかります。超高学歴層では親ガチャの影響がより顕著に出ることがわかります。
考察
(1)結論
「親ガチャによって高学歴になる確率はどのくらい変わるのか?」の答えは「数倍変わる可能性がある」になります。
特筆すべきは「ハイエンド層では、親ガチャの成功が非常に重要になる可能性がある」ということです。
(2)妥当性評価
前提評価
高学歴の定義、親ガチャ成功の定義を変数化して、明確な数値として議論したのは、Goodです。
社会の偏差値の分散、親が決まったときの個人の偏差値の分散を、等しいと考えて議論したのは、very badです。親が決まれば、子どもの遺伝的能力や環境由来の能力はおおむね決定されます。つまり、親が決まったときの個人の偏差値の分散は、社会の偏差値の分散より小さくなるはずです。これは親ガチャオッズの数値計算に深刻な影響を与えたはずです。
方法評価
親ガチャオッズという考え方を導入して論点を明確化したのは、Goodです。
オッズ概念を持ち込んだので、もともと無視できるほど小さいものを結果的に大きく誇張してしまったのは、Badです。例えば、宝くじに当たる確率が100万分の1か1億分の1かは量的には無視できますが、オッズは100になり大きく誇張されているように見えます。
結論評価
親ガチャに成功すると高学歴になる確率が上がるという関係を導けたのは、Goodです。
本当に数十倍になるか疑問なので、Badです。追加の議論が待たれます。
(3)意義
親ガチャが高学歴になる確率をどう変えるかを定量的に議論できてよかったです。
この議論は、学者、医者、スポーツ選手にも応用できるでしょう。
付録:Rコード
親ガチャオッズの計算↓
library(ggplot2)
prob_high_usual <- 0.1 #高学歴は上位いくら?
family_effect <- 5 #親ガチャ効果
high_hensachi <- 50 + qnorm(1-prob_high_usual) * 10 #偏差値いくら以上の人が高学歴か
prob_high_family_effect <- 1 - pnorm(high_hensachi, mean=50 + family_effect, sd=10) #親ガチャ成功で高学歴になる確率
prob_high_family_effect/prob_high_usual #親ガチャオッズ
確率密度関数の作図↓
#上限下限
upper <- 80
lower <- 30
#確率密度関数の作図
ggplot(data = data.frame(X = c(lower, upper)), aes(x = X))+
stat_function(fun = dnorm, args=list(mean=50 + family_effect, sd=10))+
geom_ribbon(data=data.frame(X=x<-seq(high_hensachi,upper,len=101), Y=dnorm(x,50+ family_effect,10)),aes(x=X, ymin=0, ymax=Y),fill="blue",alpha=0.5)+
geom_ribbon(data=data.frame(X=x<-seq(lower,high_hensachi,len=101), Y=dnorm(x,50+ family_effect,10)),aes(x=X, ymin=0, ymax=Y),fill="grey",alpha=0.1)+
stat_function(fun = dnorm, args=list(mean=50, sd=10))+
geom_ribbon(data=data.frame(X=x<-seq(high_hensachi,upper,len=101), Y=dnorm(x,50,10)),aes(x=X, ymin=0, ymax=Y),fill="grey",alpha=0.8)+
geom_ribbon(data=data.frame(X=x<-seq(lower,high_hensachi,len=101), Y=dnorm(x,50,10)),aes(x=X, ymin=0, ymax=Y),fill="grey",alpha=0.1)+
stat_function(fun = dnorm, args=list(mean=50, sd=10))+
stat_function(fun = dnorm, args=list(mean=50 + family_effect, sd=10),color="blue3")+
xlab("偏差値") +
ylab ("確率密度") +
ggtitle ("黒が通常、青が親ガチャ成功") +
theme_grey(base_family = "HiraKakuPro-W3")
親ガチャオッズのグラフ↓
data_0 <- data.frame(X = prob_high_usual <- seq(0.0003,0.2,0.000001))
func_m5 <- function(prob_high_usual) (1 - pnorm(50 + qnorm(1-prob_high_usual) * 10, mean=50 -5, sd=10))/prob_high_usual
func_5 <- function(prob_high_usual) (1 - pnorm(50 + qnorm(1-prob_high_usual) * 10, mean=50 + 5, sd=10))/prob_high_usual
func_10 <- function(prob_high_usual) (1 - pnorm(50 + qnorm(1-prob_high_usual) * 10, mean=50 + 10, sd=10))/prob_high_usual
ggplot(data = data_0, aes(x = X))+
stat_function(fun = func_m5, color="blue3")+
stat_function(fun = func_5, color="red3")+
stat_function(fun = func_10, color="darkviolet")+
stat_function(fun = func_20, color="darkgreen")+
xlab("高学歴を上位いくらと考えるか") +
ylab ("親ガチャオッズ") +
scale_y_continuous(limits = c(0, 10),breaks = seq(0,10,1))+
ggtitle ("親ガチャで偏差値−5、+5、+10、+20") +
theme_grey(base_family = "HiraKakuPro-W3")
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