9.正の外部性にどう対処すべきか?【社会厚生】

社会厚生の分析

 なぜ教育や研究開発は支援すべきなのでしょうか?

 それは当事者が利益を得ると同時に、社会全体が利益を得ることができるからです。

 このとき、正の外部性が発生し、供給が過小になります。

 適切な補助金を社会が拠出する必要があるのです。

 ここでは余剰分析の手法を用います。

関連用語

1、正の外部性:具体例

(1)教育

 例えば、教育。

 教育には本人の学習意欲満足・将来所得の向上をもたらします。

 けれども、社会の生産性の向上・民度の向上という形でも寄与します。

 第三者の我々は見ず知らずの人の教育費用を負担することはありませんから、これは外部性にあたります。

 日本がアジアで最初に近代化したのも教育水準の高さであるとも言われており、発展途上国では非常に重要な分野になります。

(2)研究開発

 研究開発も同じです。

 研究開発に成功すると、企業は先行者として競争優位を得たり、特許によって利益をあげることができます。

 さらに、ここには正の外部性が発生しています。

 科学技術や知識は伝達可能で、研究開発費用を払っていない人も、いずれ利用することができるからです。

 また、経済成長や生活水準の向上に、研究開発は非常に大きな影響を及ぼしており、その点でもっとも重要な正の外部性であるとも言えるでしょう。

 

(3)農業・農村

 農業・農村も同じです。

 たしかに農業や林業で得られる利益は、事業者しか得ることができません。

 けれども、温暖化抑制・景観保全・水源涵養・野生動物保護・安らぎの場の提供といった多面的機能を持ちます。

 これも同様に正の外部性です。

2、過小供給のメカニズム

 つぎに、費用を払わない第三者が存在することで、社会厚生が減ってしまうことを説明します。

(1)通常の経済

 通常の経済を考えましょう。

 ここでは、市場メカニズムによって需要曲線供給曲線の交点に落ち着きます。

 市場均衡では、社会的余剰が最大になるので、社会にとって最もよい状態です。

(2)正の外部性がある経済

 個人的な便益以上に、社会が便益を得ることができる正の外部性があったとしましょう。

 すると、私的限界評価より、社会的限界評価が上にきます。

 市場価格と生産量は、私的限界評価と限界費用の交点で決まります。

 しかし、社会的な利益は

の合計です。

 ですので、赤い三角の死荷重が生まれます。

 これが正の外部性があると、過小供給が起きる理由です。

3、正の外部性への対処

(1)解決策=ピグー補助金

 結論から言うと、過小供給を回避して、社会的余剰を最大化するには、

  • 正の外部性の分、ピグー補助金を出す

のが適切です。

 理由を解説しましょう。

 

(2)プラスの余剰計算

 政府が最適供給の際に発生する「生産者価格」と「消費者価格」の差を補助金で出すとしましょう。

 すると、次のように

  • 消費者余剰
  • 正の外部性

が発生します。

 生産者余剰は次の通りです。

 これらを合わせて計算すると、プラスの便益は次のように計算することができます。

(3)マイナスの余剰計算

 さて、補助金は政府が拠出しますが、もともとは国民の税金です。

 補助金はマイナスの余剰になります。

 正の外部性((2)の黄色の平行四辺形)と同じだけ補助金を拠出するとすると、(3)のムラサキの長方形と同じ面積になります。

 

(4)余剰分析の結果

 プラスの部分からマイナスの部分を引くと、最初に示した社会的余剰が導けます。

 これは補助金がない場合とくらべて、死荷重分、社会にとって良い状態です。

4、現実への示唆

 教育の普及・研究開発の補助・農業農村の保護には、多額の税金が注ぎ込まれています。

 これらは正の外部性があり、市場に任せると過小供給が発生しているからです(市場の失敗)。

 国として補助金を拠出するのは、決して場当たり的な対応(バラマキ)ではなく、社会にとってプラスであるのです。

 逆に、自己責任論だけで片付けるのは社会にとってマイナスです。