4.契約曲線/ 所得分配で公平性を操作する【エッジワースの箱】

一般均衡理論

 弱肉強食。金持ちはどんどん豊かになる。労働者はずっと搾取される。

 資本主義にそんなイメージをもっていないでしょうか?

 そして、その自由競争を是とする近代経済学(マルクス経済学ではない経済学)も、弱肉強食の守護者のように思えてしまうでしょう。

 しかし!これは違います!

 実は、近代経済学は格差拡大を容認する学派ではありません!

 ここでは、公平性に関する厚生経済学の第二基本定理を視覚的に理解できる契約曲線を解説します。

1、エッジワース・ボックスの復習

 まず、エッジワース・ボックスからは、市場均衡がパレート最適であることがわかります。

 詳しくは

  1. エッジワース・ボックスでの資源分配モデル
  2. エッジワース・ボックスで市場を分析する

の記事をご覧ください。

 これにより、市場メカニズムでの資源分配が効率性をもつとの結論が導けます。

2、契約曲線

(1)消費者Aがお金持ち

 ところで、市場均衡は初期保有によって決まってきます。

 ですので、消費者Aが富裕、消費者Bが貧乏の場合、下のような市場均衡が実現します。

 消費者Aの効用が大きいまま、消費者Bの効用が小さいままですが、両者ともに初期保有より大きな効用を得ています。(パレート改善の結果)

(2)消費者Aが貧乏

 こんどは逆パターンを考えます。

 消費者Aが貧乏で、消費者Bが富裕の場合です。

 すると、下図のように市場均衡が達成されます。

(3)契約曲線

 以上の結果を考えると、さまざまな初期保有の場合においてのパレート最適点が存在します。

 これらの集合を契約曲線といいます。

 市場メカニズムに任せると、自然と資源分配は契約曲線上に落ち着きます。

「最終的にwin-winの契約が成立する取引内容」とも言えるでしょう。

3、効率性と公平性をどう確保するか?

(1)効率性と公平性をどう考えるか

 さて、契約曲線上では、経済学的に効率性が達成されています。

 では、公平性はどのように考えるべきでしょうか?

 下の図では、左と右の点は、消費者AとBの効用格差が大きすぎます。

 なんらかの価値判断によって、

  • 左と右の点は不公平
  • 真ん中の点は公平

となったとします。

 このとき、どうやって公平性と効率性を両立すればいいでしょうか?

※学部ミクロ経済学の範囲では「公平性」がどこにあるのかを決定できないです。したがって、「なんらかの価値判断」とぼやかしました。ただ、どんな資源配分を公平性とするのかは別にして、公平性を管理できることを示します。

(2)天才的な資源分配政策

 初期保有を赤とします。

 ここから適切な資源分配政策(青)で、パレート最適を実現する解は一つです。

 これは非常に難しいです。

(3)資源分配と市場メカニズム

 次は大雑把な資源分配政策をしたあとに、市場メカニズムに任せる政策です。

 このとき、資源分配政策の最適解は、予算制約上の任意の点です。

 資源分配のあと、市場メカニズムに任せると自然とパレート最適になります。

 なお、直接的にパレート最適点を達成してもいいです。

4、まとめ 〜厚生経済学の第二基本定理〜

 効率性を達成するには市場メカニズムに任せるのがよく、公平性は資源分配で操作できます。

 任意のパレート最適は、適切な所得分配によって実現できることを「厚生経済学の第二基本定理」といいます。

 経済学は、自由競争による効率性の追求だけを理論的に擁護するのではなく、所得分配も重要視しているのです。