ソロー・モデル理解に必要なマクロ経済学の前提知識

 ここではソロー・モデル理解に必要なマクロ経済学の知識をまとめました。初学者でもわかるようになっています。

しまうま

東大生/ 欲しいものは大局観。目指すは全体最適。|経済学の考え方が好きです。

1、生産関数

 経済学の基礎概念に生産関数があります。関数とは、xを入力するとyが出力されるような数学概念になります。

  • y=f(x) ←xを入力するとyが出力される関数

 経済学はこのアイデアを利用し、企業を生産関数とみなします。企業とは、生産要素を投入すると、生産物が産出されるシステムと考えるのです。

生産関数 

 国内総生産GDPを導出できる生産関数をマクロ生産関数といいます。例えば、労働Lのみで、GDPが決まるとき

  • Y=F(L)

と表すことができます。ソロー・モデルでは、労働L・資本K・技術Aを生産要素としますから、

  • Y=F(L、K、A)

と表すことができます。なお、この記事では国内総生産をGDP(Gross Domestic Production)と表現したり、産出Y(Yield)と表現したりしますが、どれも同じ意味です。

2、経済成長

 さて、経済成長をモデル化するために、ソロー・モデルでは生産要素が時間によって変化すると考えます。時間に応じて、

  • 労働L・・・人口増加する
  • 資本K・・・・資本蓄積する
  • 技術A・・・・・技術進歩する

と考えます。

 このように考えると、経済成長とは、労働L、資本K、技術Aの変化を追うことで、分析できるというわけです。

3、規模に対する収穫一定

 ソロー・モデルでは、生産性についての2つの仮定を置きます。

  • 規模に対する収穫一定
  • 限界生産性の逓減

という経済学では特によく使われる仮定です。

 規模に対する収穫一定とは、生産要素すべてをn倍にすると、生産量もn倍になることです。例えば労働者1人&工場1個で、1ヶ月で車1台を生産できるとすると、労働者3人&工場3個で、1ヶ月で車3台を生産できることを意味します。これは規模を増やしても生産性が落ちも増えもしないことを意味します。

規模に対する収穫一定

 労働Lと資本Kを用いた生産関数Y=F(L、K)を用いると、規模に対する収穫一定は次のようにかけます。

  • 生産要素をt倍にした生産量Y=F(tL、tK)
  • 生産量をt倍にした生産量Y=tF(L、K)

は等しいので、

  • F(tL、tK)=tF(L、K)

となります。この仮定は、あとあと役に立ちます。

4、限界生産性の逓減

 限界生産性の逓減とは、一つの生産要素だけ増やし続けても、生産の伸びはどんどん小さくなっていくことです。例えば、

  • 労働者1人&工場1個で、1ヶ月で車1台を生産できる
  • 労働者1人&工場2個で、1ヶ月で車1.8台を生産できる
  • 労働者1人&工場3個で、1ヶ月で車2.4台を生産できる

というとき、「生産量」は増えていますが、「生産量の伸び」がどんどん小さくなっていることがわかります。「生産量の伸び」は、プラス1台→プラス0.8台→プラス0.6台→・・・という具合に減っています。これを限界生産性の逓減と言います。

 限界生産性の逓減とは、労働者が少なくて、多くなった資本の能力を引き出せないので、発生します。

 限界生産性の逓減をグラフにしてやると、つぎのように描けます。この図は、ソロー・モデルを成り立たせる中核的な仮定になります。

限界生産性の逓減

5、生産面のGDP

 ところで、国内総生産(GDP)とは一体なんでしょうか。GDPとは、一定期間に国内で生産された付加価値を貨幣換算で合計したものです。これは国の豊かさを表す指標になります。

 なぜ、GDPが国の豊かさの指標になるのでしょうか。ここでポイントになるのは、付加価値という概念です。付加価値とは、産出から中間投入財の価値を差し引いた価値になります。なぜ、これは二重計算を防ぐためです。例えば、レストランは、農産物と調理を合わせた価値を世の中に提供しています。しかし、農産物を作り出したのは農家であり、レストランの働きは「調理」のみにあります。

もし何も考えずに国家統計局が、農家とレストランの売り上げを合計してしまうと、

  • 国内総売上
  • =(農家の売上)+(レストランの売上)
  • =(農産物の価値)+(農産物の価値+調理の価値)

と農産物の価値を二重計算してしまいます。これは明らかに国の豊かさを過大評価しています。一方、付加価値の合計である国内総生産GDPは

  • 国内総生産GDP
  • =(農家の付加価値)+(レストランの付加価値)
  • =(農産物の価値)+(調理の価値)

となるわけです。

 このように考えると、GDPは社会に行き渡った経済的価値、つまり、国の豊かさと同一視できるわけです。

※もちろん、GDPを国の豊かさと考えるには、少々難点があります。非経済部門も考える場合、人々が最終的に獲得した価値=GDP+非経済部門からの価値となります。あくまでソロー・モデルは、経済的な国の豊かさについて言及します。

6、支出面のGDP 

 さきほど、「企業が生産する付加価値」という観点からGDPを見ました。今度は「人々が払う支出」という観点から支出面のGDPをみてみます。経済主体は家計・企業・政府・外国人の4つに分けられます。ですから、

  • 国内総生産=家計の消費C+企業の投資I+政府の支出G+外国人の支出NX
支出面のGDP

となります。ただし、ソロー・モデルでは、政府と外国人がいない経済を仮定します。したがって、

  • 国内総生産Y=消費C+投資I

と表せます。

※「企業は投資以外にも、支出している。例えば、原材料費だ」という指摘もありますが、原材料は中間投入財です。付加価値の合計であるGDPには含まれません。

7、分配面のGDP

 次に、「生産の対価として、どれくらいお金を分配されたか」という観点から分配面のGDPをみてみます。ここで「企業はそれぞれの働きに報いて報酬を与える」と仮定します。

 企業の生み出した付加価値は、労働L・資本K・技術Aの働きによります。労働Lの所有者は労働者、資本Kの所有者は資本家、技術の所有者は物理法則を作った「神」です。神には感謝を捧げるとすると、企業の儲けは労働者と資本家にすべて分配されます。

分配面のGDP

 労働者と資本家はどちらも消費者ですから、国内総生産は企業の儲けであり、消費者の所得でもあります。

 ですから、

  • 国内総生産Y=労働者の所得+資本家の所得=消費者の所得

となります。

 消費者は、所得を消費と貯蓄に分けますから、

  • 国内総生産Y=消費C+貯蓄S

と考えることができます。

8、三面等価の原則

 5〜7からは、三面等価の原則が導かれます。ソロー・モデルが仮定する政府と海外部門が存在しない経済では、次の3つは等しくなります。

  • 生産面のGDP=企業が生み出した付加価値
  • 支出面のGDP=消費C+投資I
  • 分配面のGDP=労働者の所得+資本家の所得=消費者の所得=消費C+貯蓄S

 これを三面等価の原則といいます。

9、投資と貯蓄は等しい

 三面等価の原則から面白いことがわかります。

  • 支出面のGDP=分配面のGDP
  • 消費C+投資I=消費C+貯蓄S
  • 投資I=貯蓄S

です。これをISバランスと言ったりします。

10、資本蓄積

 資本は、投資によって増えますから

  • 資本増加△K=投資I

という簡単な式を作り出せます。△Kとは、Kの増加という意味です。(6)で述べたとおり、投資I=貯蓄Sです。所得Yのうち、貯蓄に振り分ける割合を貯蓄率sとすると、

  • △K=I=S=sY

となります。

 なお、ソロー・モデルでは、貯蓄率sが一定という仮定をおいています

11、人口増加 

 ソロー・モデルでは、労働Lの変化を人口増加と捉えます。さらに、人口は一定の人口増加率nで増えていくとシンプルに考えます。

  • △L=nL

12、技術進歩

 では、技術Aはどう定式化すべきでしょうか。技術進歩すると、労働と資本と変化しなくても、生産できる価値が増大します。技術進歩は、実質的に労働者が増えるのと同じとみなせます。このような労働増大的技術進歩のとき、次のように生産関数を書くことができます。

  • Y=F(AL、K)

 ソロー・モデルでは、この技術Aが一定の技術進歩率gで増えていくとシンプルに考えます。

  • △A=gA

 ちなみに、技術A×労働Lを有効労働者数といいます。有効労働のアイデアは、のちのち威力を発揮します。

13、モデルの解説記事↓

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