技術進歩は、経済成長にどのような影響を与えるでしょうか?
この記事では、分析のために経済学部で習うマクロ経済学において最も重要な理論のひとつであるソロー・モデルを用います。
1、技術進歩とソローモデル
(1)技術進歩
「イノベーションが日本経済にとって重要である」
とよく言われます。イノベーションの和訳は技術革新で、「市場を変えてしまうような新技術の実用化」です。
ただ、技術進歩はもっと地に足がついた概念です。
少ない労働で大きな成果、少ない資本で大きな成果という生産性の向上を技術進歩といいます。
もし技術進歩が生まれたら、労働や資本の伸びより多くの経済成長が期待できます。
では、技術進歩は経済成長にどの程度の影響を与えるのでしょうか?
技術進歩による生産性の向上を、効率労働の増大とみなして議論します。
- 【効率労働】=【効率性】×【労働】
(2)経済成長の結末
ここではソロー・モデルを用います。基本的なモデルでは、次のように考えて議論を進めます。

ただ、技術進歩を考慮するソロー・モデルでは少し手を加えます。労働一人当たりではなく、効率労働1単位あたりで考えるのです。
ソロー・モデルは、次のように図を書くことができます。(詳しくは、ページ最後の補論へ)
sf(k)が資本kの増加要因、(δ+n+g)kが資本kの減少要因です。

時間が経過すると、資本の増加と資本の減少はオレンジの定常状態に収束します。
これがソロー・モデルでの経済成長観です。

2、技術進歩の果たす役割
ここで技術進歩が果たす役割について考えてみましょう。
(1)技術進歩の影響
技術進歩は次のように考えることはできます。

(2)技術進歩率の役割
一人当たり経済成長率はgです。
したがって、全く技術進歩しない、つまり、技術進歩率g=0であれば、まったく人々は豊かにならないことを意味します。
また、国全体の成長率は人口増加率n+技術進歩率gですから、技術進歩は経済成長のために絶対に必要なのです。
3(補論)、技術進歩率を考慮した時の資本蓄積式
最後に、技術進歩率を用いた資本蓄積式について、「t期からt+1期で考えるパターン」と「微分で考えるパターン」の2つで考えます。
(1)連続モデル(微分)で考える技術進歩
このページでは連続モデルを用いました。
※商の微分公式を使います。

(2)離散モデル(t期)で考える技術進歩

