ソロー・モデルと定常状態の導出【図と数式でわかりやすく解説】

経済学

 「てれすこーぷ。from 東大」管理人のしまうまです。今回は、経済成長理論であるソロー・モデルについて解説したいと思います。

 この記事では、減価償却のみ考える基本的なソロー・モデルを構築して、定常状態を導出することを目指します。

 黄金律の導出、人口成長と技術進歩を加味した発展的なソロー・モデルについては、別記事にて解説します。

 それではいってみよう!

<結論だけ知りたい人用:ソロー・モデルの数式>

ソローモデルの数式

<結論だけ知りたい人用:定常状態>

ソローモデルにおける定常状態

1、ソロー・モデルとは?

 ソロー・モデルとは、長期的な経済成長がどのようにおきているのかを説明した理論で、マクロ経済学においては最も有名な理論のひとつです。

 ソロー・モデルがもたらす示唆に関しては次のように整理できます。

(1)何が経済成長を決定するか?

 ソロー・モデルでは、経済成長は次の4つによって決定されます。

要因経済成長に与える影響
貯蓄率国民が貯蓄するようになれば、
経済成長にプラスの影響を与える。
減耗率モノが壊れると、
経済成長にマイナスの影響を与える。
人口成長率人口が増大すれば、
経済成長にマイナスの影響を与える。
技術進歩生産技術が向上すれば、
経済成長にプラスの影響を与える。

(2)経済成長に終わりはあるのか?

 ソロー・モデルでは、経済規模が大きくなるごとに生産性が悪くなると考えます。また、モノが壊れるスピードは変わらないと考えます。

 そのために、モノが作られるスピードと壊れるスピードと一致して、経済成長しなくなる状態が発生します。

 これが定常状態と呼ばれる状態です。

(3)持続的な経済成長には何が必要か?

 古代や中世をにまで視野にいれた超長期分析では、長い間、世界経済は停滞しており、定常状態にあったことがわかります。

 しかし、産業革命以後、世界経済は成長を続けており、定常状態には至っていないように思えます。

 ソロー・モデルでは、定常状態における成長を技術進歩率によって説明することで、この矛盾を解消しています。

 現在、イノベーションや研究開発(R & D)に注目が集まる背景には、この経済理論があります。

2、利用する仮定と経済学モデル

(1)ソロー・モデルの仮定

 まず、ソロー・モデルでは次のような仮定をおいてます。

  • 長期の経済を対象としており、供給がGDPを決定する(古典派)
  • 閉鎖経済=貿易なし
  • 貯蓄率sは一定
  • (人口成長率・技術進歩率は外生変数)

(2)ソロー・モデルを導出するための3つの経済学モデル

 ソロー・モデルを導出するには、次の3つのモデルが必要です。

 それぞれは、マクロ経済学の基本的なモデルです。これから下の3式について説明します。

ソローモデルの基本的な仮定

(3)生産関数

 経済学では、生産量は労働量Lと資本量Kによって決まると考えます。これが生産関数という考え方です。

 さらに、ここでは生産関数に2つの仮定がついています。

 一つ目の仮定は限界生産性逓減で、資本量か労働量のどっちか片方だけ増えると、生産性が下がっていくことです。

 二つ目の仮定は収穫一定で、資本量と労働量が同時にn倍になれば、生産量はn倍になることです。

ソローモデルにおける生産関数の取扱

(4)投資

 投資についてですが、下のようなマクロ経済学の議論を踏まえることで、(投資)=(貯蓄)と導くことができます。

ソローモデルにおける投資と貯蓄について

(5)資本蓄積

 最後に資本蓄積は下のように考えます。

ソローモデルにおける資本蓄積

 これでソロー・モデルで必要な3式が出揃いました。

3、ソロー・モデルの導出 

(1)生産関数を一人あたりで考える

 さて、さきほどの生産関数では、資本と労働の2変数関数ですので複雑です。そこで、「一人あたり」で考えることで、労働に関する変数をなくして、1変数関数にします

 ここでさきほど述べた収穫一定の仮定が登場します。

収穫一定からひとりあたりの生産関数を導出する

(2)投資と資本蓄積も一人あたりで考える

 残りの式についてても「一人あたり」で考えます。

投資と資本蓄積について

(3)ソロー・モデルの導出

 ここで一人あたりで考えた生産関数、投資、資本蓄積の3式を次のようにまとめます。

 これで「なぜ資本蓄積が起こるのか」つまり「どうして経済成長するのか」についてのソロー・モデルが構築できました

ソローモデルの数式について

4、定常状態をグラフから導出する

 さて、次は経済成長がとまる定常状態についてグラフで考えます。

(1)生産関数のグラフ

 生産関数には限界生産性が逓減しているという仮定がついていました。

 それをグラフ化すると次のように描けます。

限界生産性が逓減している生産関数のグラフ

(2)資本蓄積の増加要因と減少要因を図解する

 これを踏まえて、ソロー・モデルの数式をグラフで表現すると、次のようになります。

ソローモデルのグラフ化

(3)動的な分析で定常状態を導く

 グラフでは資本の増加と減少が次のように表現できる。この資本の増減は来年の一人あたり資本量に加算されます。

 ですので、時間を経るごとに、一人あたりの資本量が変化していきます。

 そして、ある点より左側では「右へ」という変化、ある点より右側では「左へ」という変化がうまれます。

 最終的にある点に限りなく近づき、経済成長は停止します。この状態が定常状態です。

 ソロー・モデルにおいて、経済成長は定常状態に至るまでの一時的な移行期にすぎないと考えるのです。

ソローモデルにおける定常状態(動学的分析)

5、おわりに

 この記事ではマクロ経済学的な仮定からソロー・モデルの導出し、経済成長が定常状態への移行期であるという示唆を導きました。

 しかし、ここには

「どのような定常状態がもっとも幸せか?」

「人口成長と技術進歩はどんな影響をおよぼすか?」

「現実において経済成長が持続するのはなぜか?」

という問いが残ります。

 これについては、また別の記事で考えたいと思います。

 さて、今日はこの辺で!

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