スルツキー分解とは?図と数式でわかりやすく解説

 スルツキー分解(Slutsky identity)とは、価格変化による需要変化を

  • 代替効果:相対価格変化の影響
  • 所得効果:実質的な所得変化の影響

の2つの要因にわけて考えることです。

 ミクロ経済学消費者理論に分類される議論です。

 ここでは、グラフと数式での解説を行います。

<具体例>

 お小遣いが週500円の小学生が、毎週、300円のアイスと100円のガムを買っているとします。

 ここでアイスが300円から100円に値下がりすると、小学生は割安なアイスをたくさん買うようになります。これが代替効果です。

 さらに、普段300円払っていたアイスが安くなるわけですから、実質的にはお小遣いが増額したようなものです。このために100円のガムもたくさん買うようになります。これが所得効果です。

<結論だけ知りたい人向け>

価格変化(全部変化)を所得効果と代替効果にスルツキー分解した画像

交流スペース
[wise-chat channel=”My Room”]

1、所得効果と代替効果のグラフ理解

 2財モデルのスルツキー分解をグラフで考えていきます。

(1)予算制約の下での効用最大化とは?

 ミクロ経済学では「人間は合理的に行動する」と考えます。

 ここでの合理的というのは、効用最大化支出最小化を意味します。

 こうして得られた最適消費点は、次のように無差別曲線予算制約線の接点にあります。

(2)値上がりした場合の予算制約線の変化

 さて、ここで1財の価格が値上がりしたとします。

 すると下のように予算制約線の傾きが急になります。

 消費者は合理的ですから、予算制約下での効用最大化をします。

 こうして、無差別曲線と新しい予算制約線の接点に、新しい最適消費点が形成されます。

(3)最適消費点の変化

 さあ、やっと「価格が変わるとどう需要量が変わるのか?」がわかりました。

 ここからスルツキー分解のはじまりです。

予算制約下の効用最大化問題を2財モデルのグラフによって図示し、1財が値上がりした場合としていない場合の最適消費点を比較した画像

(4)値上がりしても効用が変わらない場合

 ここで一つ思考実験をします。

 値上がりしても効用が変わらない消費をするために、一番安い予算はどんな予算制約線で表されるでしょうか?

 値上がりしているので傾きは急になる中で、支出最小化すると、もともとの無差別曲線上の点に接する予算制約が考えられます。

予算制約下の効用最大化問題を2財モデルのグラフによって図示し、1財が値上がりした場合における費用最小化問題をといたときの予算制約線を特別に強調した画像

(5)グラフでのスルツキー分解

 価格による消費量の変化は、図のように

  • 割安な商品を買うようになる=予算制約線の傾きの変化による代替効果
  • 実質的な所得の変化=予算制約線の平行移動による所得効果

 に分けられるのです!

 なお、これらを合わせた全部の効果を価格効果、または、全部効果といいます。

価格変化(全部変化)を所得効果と代替効果にスルツキー分解した画像

2、数式によるスルツキー分解の導出

 次に、数式と微分によってスルツキー分解を導出したいと思います。

(1)需要関数と補償需要関数

 まず、はじめに消費者の行動を次のような関数で表します。

需要関数と補償需要関数の定義

 はじめの関数は需要関数、次の関数は補償需要関数といいます。

(2)消費の双対性

 さきほどの関数ですが、最適消費点では数値は同じはずです。

 なぜなら、合理的な消費者なら、「予算の中の効用最大化」と「同じ効用の中での費用最小化」を同時に達成しているからです。

 このように効用最大化と費用最小化が表裏一体の現象であることを、消費の双対性といいます。

消費の双対性

(3)実質所得の変化

 ここで一旦脱線します。

 「ある財の価格が1円増えると、所得は実質的にどれほど失われるでしょうか?」

 これは簡単に考えることができます。

  • 支出A=価格P×数量X

です。この価格が1増えると

  • 支出B=(価格P+1)×数量X=支出A+数量X

です。

 支出がより、X円分、増えています。

 したがって、「ある財の価格が1円増えると、所得は実質的にX円失われた」といえます。

 これを一般化して考えたのがシャファードの補題です。

(4)微分によるスルツキー分解

 消費の双対性とシェファードの補題をもちいると、次のように計算できます。

数式と微分によるスルツキー分解

(5)数式の言語化

 「なんのこっちゃあ」と思われたと思います。ご安心ください。多分、他の学生もよくわかってません笑

 ただ、ここで最終的に何が導かれたのかだけは押さえておきましょう。

(6)グラフと数式の統一的な理解へ

 上の数式をみると、

  • 代替効果は、効用水準下での費用最小化を意味する補償需要関数
  • 所得効果は、予算制約下での効用最大化を意味する需要関数

によって表されていることがわかります。

 ここでグラフでの議論を思い出してみましょう。

価格変化(全部変化)を所得効果と代替効果にスルツキー分解した画像

 代替効果はあそこで「効用水準下の費用最小化」によって、所得効果はあそこで「予算制約下での効用最大化」によって論じていました。

 つまり、本質的にはグラフも数式にも通底する同じ発想があったのです!

 これで図と数式によるスルツキー分解の理解は完璧です。

タイトルとURLをコピーしました