スルツキー分解とは?図と数式でわかりやすく解説

経済学

 「てれすこーぷ。from 東大」管理人のしまうまです。今回は、ミクロ経済学で出てくるスルツキー分解について解説したいと思います。

 この記事でははじめに「なんでスルツキー分解って重要なの?」について述べます。次にグラフで、最後に微分を用いた数式にてスルツキー分解を解説します。

 それではいってみよう!

<結論だけ知りたい人向け>

価格変化(全部変化)を所得効果と代替効果にスルツキー分解した画像
スルツキー分解の言語化

1、スルツキー分解ってなんで重要なの?

(1)スルツキー分解とはなにか?

 スルツキー分解とは、「価格が変わるとなぜ需要量が変わるのか?」を

  • 割安な商品を買うようになる代替効果
  • 実質的な所得の変化による所得効果

に分解することです。ちなみに、スルツキーは20世紀初頭のソ連の数学者・経済学者です。

(2)具体例で考える代替効果と所得効果

 具体例で考えます。お小遣いが週500円の小学生が、毎週、300円のアイスと100円のガムを買っているとします。

 ここでアイスが300円から100円に値下がりすると、小学生は割安なアイスをたくさん買うようになります。これが代替効果です。

 さらに、普段300円払っていたアイスが安くなるわけですから、実質的にはお小遣いが増額したようなものです。このために100円のガムもたくさん買うようになります。これが所得効果です。

(3)スルツキー分解の重要性

 なぜスルツキー分解は重要なのでしょうか?

 代替効果と所得効果のアイデアは言葉でも理解できますので、そこまで重要ではありません。

 スルツキー分解の重要性は、「できるだけイイものを!できるだけコスパよく!」という合理的な消費者というモデルから、代替効果と所得効果を導出することに成功した点にあります。

 以降ではそれについて図と数式で考えていきます。

2、グラフによる所得効果と代替効果

 ここでは、2財モデルのスルツキー分解をグラフで考えていきます。さあ、いってみよう!

(1)予算制約の下での効用最大化とは?

 ミクロ経済学では「人間は合理的に行動する」と考えます。ここでの合理的というのは「限られた予算の下、最大の効用を得られるような行動をする」「同じ効用を達成するにしても、最小の費用をもって達成する」という意味です。

 こうして得られた最適消費点は、次のように無差別曲線と予算制約線の接点にあります。

予算制約下の効用最大化問題を2財モデルのグラフによって図示した画像

(2)値上がりした場合の予算制約線の変化

 さて、ここで1財の価格が値上がりしたとします。すると下のように予算制約線の傾きが急になります。消費者は合理的ですから、予算制約下での効用最大化をします。

 こうして、無差別曲線と新しい予算制約線の接点に、新しい最適消費点が形成されます。

予算制約下の効用最大化問題を2財モデルのグラフによって図示し、1財が値上がりした場合の予算制約線と新しい最適消費点を図示した画像

(3)最適消費点の変化

 さあ、やっと「価格が変わるとどう需要量が変わるのか?」がわかりました。ここからついにスルツキー分解のはじまりです。

予算制約下の効用最大化問題を2財モデルのグラフによって図示し、1財が値上がりした場合としていない場合の最適消費点を比較した画像

(4)値上がりしても効用が変わらない場合

 ここで一つ思考実験をします。値上がりしても効用が変わらない消費をするために、一番安い予算はどんな予算制約線で表されるでしょうか?

 値上がりしているので傾きは急になっています。しかし、費用最小化しているので、もともとの無差別曲線上の点に接しています。これが思考実験の解です。

予算制約下の効用最大化問題を2財モデルのグラフによって図示し、1財が値上がりした場合における費用最小化問題をといたときの予算制約線を特別に強調した画像

(5)グラフでのスルツキー分解

 さて、スツルキー分解のお時間です。価格による消費量の変化は、図のように

  • 割安な商品を買うようになる=予算制約線の傾きの変化による代替効果
  • 実質的な所得の変化=予算制約線の平行移動による所得効果

 に分けられるのです!なお、これらを合わせた全部の効果を価格効果、または、全部効果といいます。

価格変化(全部変化)を所得効果と代替効果にスルツキー分解した画像

3、数式と微分によるスルツキー分解の導出

 次に、数式と微分によってスルツキー分解を導出したいと思います。実はさきほどのモデルは財が2種類しかない場合しか考えられていません。

 より一般性の高いn財モデルを理解するには、数式によるスルツキー分解の理解が必要になってきます。

 さあ、いってみよう!

(1)需要関数と補償需要関数

 まず、はじめに消費者の行動を次のような関数で表します。

需要関数と補償需要関数の定義

 はじめの関数は需要関数、次の関数は補償需要関数といいます。

(2)消費の双対性

 さきほどの関数ですが、最適消費点では数値は同じはずです。なぜなら、合理的な消費者なら、「予算の中の効用最大化」と「同じ効用の中での費用最小化」を同時に達成しているからです。

 このように効用最大化と費用最小化が表裏一体の現象であることを、消費の双対性といいます。

消費の双対性

(3)支出関数とシェファードの補題

 ここで一旦脱線します。次のように支出関数を定義すると、シェファードの補題が導かれます。これをつかってスルツキー分解をしていきますね。

支出関数とシェファードの補題

(4)微分によるスルツキー分解

 消費の双対性とシェファードの補題をもちいると、次のように計算できます。

数式と微分によるスルツキー分解

(5)数式の言語化

 「なんのこっちゃあ」と思われたと思います。ご安心ください。多分、他の学生もよくわかってません笑

 ただ、ここで最終的に何が導かれたのかだけは押さえておきましょう。

スルツキー分解の言語化

(6)グラフと数式の統一的な理解へ

 上の数式をみると、

  • 代替効果は、効用水準下での費用最小化を意味する補償需要関数
  • 所得効果は、予算制約下での効用最大化を意味する需要関数

によって表されていることがわかります。

 ここでグラフでの議論を思い出してみましょう。

価格変化(全部変化)を所得効果と代替効果にスルツキー分解した画像

 代替効果はあそこで「効用水準下の費用最小化」によって、所得効果はあそこで「予算制約下での効用最大化」によって論じていました。

 つまり、本質的にはグラフも数式にも通底する同じ発想があったのです!

 これで図と数式によるスルツキー分解の理解は完璧です。

4、おわりに

 スルツキー分解は、ミクロ経済学の授業で2番目にぶち当たる関門です。(1番目は無差別曲線と限界代替率ですよね。)

 スルツキー分解にちょこっと操作を加えれば、需要の価格弾力性になります。こうして、消費者理論はひとまず完成となります。

 ミクロ経済学は難しくて嫌になってしまいますが、「人間が合理的に行動したら?」「社会全体にとって最もよいのは?」を、おあつらえの個別的な概念ではなく統一的に議論できるのが魅力です。

 この記事がみなさんの理解の一助になれば幸いです。

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