転売は悪なのか?経済学的に考える 〜余剰分析〜

 転売は悪でしょうか?経済学で考えます。

しまうま

東大生/ 欲しいものは大局観。目指すは全体最適。|経済学の考え方が好きです。

1、社会的によいとは何か

(1)「経済厚生」概念の必要性

 経済活動を評価するなら、その評価軸が必要です。

 取引は一見すると対立する2者の駆け引きですが、この取引が社会を豊かにしているのも事実です。

 取引を俯瞰してみる観点が必要なのです。

 このような観点を「経済厚生」と言います。

(2)経済厚生のひとつ「社会的余剰」

 経済厚生の概念の一つに「社会的余剰」があります。これに基づいて、転売についての議論したいと思います。

(3)消費者余剰と生産者余剰

 「社会的余剰」です。社会的余剰は、経済主体ごとに発生する余剰の合計です。

 代表的なものは下の2つになります。

  • 消費者余剰={最大限払ってもいいお金ー市場価格}の合計
  • 生産者余剰={市場価格ー最低限回収したい費用}の合計

(4)需要供給曲線での図示

 実のところ

  • 需要曲線・・・最大限払ってもいいお金
  • 供給曲線・・・最低限回収したい費用

になりますので、グラフとしては次のように描くことができます。これで議論の土台ができました。

2、転売発生とは何か

(1)転売とは何か

 転売とは一体なんでしょうか。

 転売とは「正規の値段で買い、(自分では使わずに)それより高い値段で売る」ことです。

 したがって、次のように描くことができます。

(2)転売発生のメカニズム

 では、転売発生メカニズムはなんでしょうか。

 例えば、もし正規の価格が下のようなら、そもそも転売屋が入る余地はありません。

 一方で、つぎのようなときに転売が発生します。

 つまり、転売が生まれる根本的な原因は

  • 正規の価格が割安
  • 供給が少なすぎる

の2点にあるのです。

3、転売で社会的余剰はどう変わるか

 以上を踏まえて、転売と社会的余剰について考えます。

(1)転売がない場合の社会的余剰

 転売がない場合、市場価格が低いわけですから、「あんまり欲しくない人」も「とても欲しい人」も同じように「欲しい!」と手を挙げます。

 もし「とても欲しい人」に財が行き渡った場合は下のように余剰が描けます。

 しかし、「あんまり欲しくないけど、安いし抽選したら当たったわ」という人にのみ、財が配分されたとしたら下のようになります。

 もちろん、実際には上2つの状態は極端ですから、現実には両者の中間になります。

(2)転売がある場合の社会的余剰

 転売がある場合はどうでしょう。

 転売は高い値段で再販売しますから、「あんまり欲しくなかった人」が淘汰され、「どうしても欲しかった人」が財を手に入れることができるようになります。

 その結果、社会的余剰はつぎのように描けます。

 以上をみると、

  • 生産者が財を生産し
  • 転売屋が安く買取り、高く売ることで
  • どうしても欲しい消費者が財を買える

という状況が生まれるわけです。ここに転売屋の存在意義があります。

(3)最終的な解決は

 なお、社会にとって一番よい転売ゼロへの道は、供給量増大になります。

4、いくつかの論点

 論点を付け加えます。

(0)違法な場合やってはいけない

  • 論点「違法行為になる転売はやってはいけない」

 当然です。ここでは転売の合法性については議論していません。

(1)何も作っていない者が利益を得るのは不当だ

  • 論点「何も作っていない者が利益を得るのは不当だ」

 流通も立派な仕事です。コンビニ・スーパー・アマゾン・商社が不当な利益を得ているとはいえません。

 流通させて人にモノを届けることは極めて一般的な経済活動で、その利益は正当なものです。

(2)転売屋は買い占め行為である

  • 論点「経済学は独占や寡占により値段を釣り上げることに否定的だ。転売屋は買い占めをして値段を釣り上げている。したがって、経済学の文脈でも、転売屋は否定されるべきだ」

 たしかに、経済学では「①独占や寡占の地位」を用いて「②供給を制限」し、「③値段を均衡価格以上に釣り上げる」ことを「④経済厚生的によくない」と考えます。

 しかし、転売屋は「①無数の事業者がいる競争環境」にあり「②供給量はむしろ元々の販売者が制限」しており、「③値段を均衡価格に調整する」ために「④むしろ経済厚生を改善」します。

 どういうことでしょう。

 転売が生まれるとき供給は変えられませんから、実は下のようになっています。

 転売屋はこの「均衡価格(=転売価格)」より高く売ろうとしても、他の転売屋が低い価格で売るので売れず、値下げすることになります。ですから、実は転売価格こそが均衡価格です。

(3)高い価格で買うことになる消費者は損する

  • 論点「転売で消費者は高い値段で買わなくてはいけなく損する」

 これは正しいです。正確に言うと、「あまり欲しくないけど物を手に入れられていた人は損する」です。高い値段を出しても欲しい人は得をします。また、転売価格こそが本来あるべき価格です。

(4)お金がないけれども、とても欲しがっていた消費者が無視される

  • 論点「お金がないけれども、とても欲しがっていた消費者が無視される」

 これは正しいです。例えば、子どもや若者は「〜したい」「〜ほしい」という尋常でない欲望を持っていますが、しばしばお金がなくてやりたいことができません。「最大限払えるお金」を欲望の指標にしてもいいのかという問題は確かにつきまといます。

※経済学メモ:準線形の効用関数、所得効果

(5)転売屋ではなく生産者にお金をあげたい

  • 論点「転売屋ではなく生産者にお金をあげたい」

 これが実現するには、事業者が値上げに踏み切るしかありません。事業者は、最終的に、転売屋が実現しただろう価格と同じにまで値段を引き挙げます。

 このとき、転売は起きず、生産者は大きな利益を得られます。

(6)生産者は拝金主義的な行動をできない

  • 論点「生産者はお金儲けに走ると、ファンが離れるから、値上げしようとしない」

 この論点はちゃんと検証する必要があります。一つ反発の少ないやり方に次のようなものが考えられます。

  • 初期はプレミア付きで高いけれども、徐々に値下げしつつ、供給増大

(7)転売屋は気に食わない

  • 論点「転売には社会的意義があるのかもしれないが、転売屋は気に食わない」

 もちろん、そういう面はあるでしょう。お気持ち汲み取れなくて申し訳ありません。しかし、転売ゼロのための建設的な議論としては、供給量増大か正規価格の値上げになるのかなと思います。

タイトルとURLをコピーしました