なぜわざわざ日常のコトバから離れて、数式であらわすのだろうか?
理由はコトバが不便だからである。
3つの理由を挙げたい。
- 理由1:コトバは冗長
モデルはもちろんコトバで表すことができるが、コトバは長ったらしい。
「値段が変われば買いたい量が変わる」というモデルは16文字である。
一方で、数式だとq, p, Dだけであらわすことができる。

- 理由2:コトバは量を表しにくい
また、コトバだと「どのくらい?」を表すのがめんどくさい。そして「どのくらい」は致命的に重要だ。
「これは儲かるよ」
「どのくらいお金もらえるの?」
「1万円かな」
「いいじゃん。どのくらい働けば?」
「1ヶ月」
「ふざけんな」
一方で、数式だと量を表すことが簡単だ。
- 理由3:コトバだと、複数のモデルの統合が難しい
最後がじつは最も重要だ。
一つのモデルでは役に立たないことが多いので、人は複数の小さな世界観を統合しなくてはいけない。
このときコトバでは多大な労力が必要となる。
例えば、
- 「値段が変われば買いたい量が変わる」
に加えて
- 「企業は値段が上がると儲かる」
- 「企業はたくさん生産すると儲かる」
- 「企業はたくさん生産するとコストがかかって損する」
というモデルを統合して
- 「どのような量を企業は生産するのか?」
というモデルを作ろうとする。
これはあまりに複雑だ。
しかし、それぞれを定式化してやればクリアに理解できるのである。
こういったこともあり、経済学では数式を使う。コトバで表すよりはるかに便利だ。
知性に限界が存在する人類にとって、経済学で数学を用いることのメリットは大きいのである。