限界変形率(Marginal Rate of Transformation)(略:MRT)とは、1財を追加で1つ生産するため減らさなくてはいけない2財の量である。
そのため限界変形率は、1財の追加的な生産でうまれる機会費用と解釈する。
数学的には次のように表せる。

関連話題は以下で整理する。
1、生産可能性曲線と限界変形率
(1)限界変形率の図示
限界変形率は、次のように生産可能性曲線との関わりで視覚的に表現できる。
また、限界変形率は、生産可能性曲線の接線の傾きの大きさである。

(2)限界変形率が逓増する理由〜
なぜ限界変形率は逓増するのだろうか?
(これは生産可能曲線が原点に対して凹である理由でもある。)
それは1財を作れば作るほど、その機会費用が増大するからだ。理由は次の通り。
- 1財の生産量が少ないとき
当初は2財を作りすぎている。
これは、1財を生産するのに適した生産要素も、2財の生産に回すという非効率な状態である。
ここで、生産要素を2財から1財に振り分けると、生産が効率的になるので機会費用は小さい。
- 1財の生産量が多いとき
しかし、1財を多く作るようになると、逆のことが起きる。
ここで2財を生産する生産要素は少数であるが精鋭ぞろいである。
ここで、生産要素を2財から1財に振り分けると、生産が効率的になるので機会費用は大きくなる。
2、限界変形率の計算方法
(1)限界変形率と限界生産性
限界変形率は、次のように限界生産性の比であわらすことができる。
解説は、補論(ページ下部)であつかう。

(2)限界変形率と限界費用
限界変形率は、次のように限界費用の比であわらすことができる。
解説は、補論(ページ下部)であつかう。

3、補論
(1)限界生産性の比で表せる理由
1財と2財を労働Lのみで生産する場合を考える。
1財での労働の限界生産性は、

である。ここで、1財を1単位減らすと

である。これを限界生産性の式に代入し、1財生産に使われる労働の変化を求める。

生産可能性曲線上で使われる労働Lは同じである。
つまり、2財生産に使われる労働Lの変化は、

である。これを2財の限界生産性

に代入してやると、1財を1単位減らすことで余った労働をつかって、新たに2財をいくら生産できるかを表わることができる。
これが

である。ここで限界変形率の定義を思い出して代入してやると、次のように限界変形率を導くことができる。

これは限界変形率は限界生産性の比で表せることを意味している。
(2)限界費用の比で表せる理由
※これは直前の「限界生産性の比で表せる理由」の結果を利用するので、見ていない人は上もみてほしい。
限界費用は、追加的に1つ生産量を増やすために必要な費用である。これは次のように表せる。

ここで、労働の限界生産性MPLが△x/△Lであることを考慮すると、

と表せる。一つ前の補論とこの結果を用いると、限界変形率は次のようにあらわせる。

これは限界変形率が、限界費用の比で表せることを意味する。