6.ワルラス法則の証明/ 超過需要の和はゼロ【一般均衡】

一般均衡理論

 部分均衡理論によると、1つの財の市場が市場均衡にいたると社会的余剰が最大化します。

 ですので、「市場に任せるのがよい」という規範的議論が成立しているわけです。

 では、「市場均衡が社会厚生的によいのはわかった。じゃあ、ある市場が市場均衡した結果、別の市場均衡が失われるってことは考えられないか?これに答えられないと、一般性はないよね」という反論にはどう答えればいいでしょうか?

 実は「すべての財の需給ギャップを合計するとゼロ」になるというワルラス法則(Walras’s law)があります。

 これは「n財以外のすべての財市場を均衡させれば、n財の市場も均衡する」ことを意味しています。

 ワルラス法則を証明しましょう。

1、消費者の予算制約式をすべて足す

 まず、「一般均衡モデルの構築」で説明した消費者の予算制約式を思い出してください。

 支出は、初期保有からの収入と利潤分配から支払われます。

 初期保有からの収入には、労働所得も含まれています。

<図1:消費者iの予算制約式>

 さて、上の予算制約式はよく見ると、消費者iについての式です。

 そこで、消費者1〜Iまでを合計します。

 合計する際はΣを使います。

 すると、次のように表せます。

<図2:消費者1〜Iの予算制約の合計>

2、利潤配分の式変形

 ここでΣが二つ連続していて、利潤分配率θも入っている項を、変形します。

 上で立式したものは、「まず個別の消費者の利潤分配を出した上で、それを合計」していました。

 しかし、「まず個別の企業の利潤分配を出した上で、それを合計」しても答えは変わりません。

 ですので、Σの位置を入れ替えてやります。

 次に、企業の利潤は消費者に分配され尽くすと考えているので、黄色の部分は1になります。

 最後は、価格体系pを外に出します。

<図3:利潤分配の式変形>

3、超過需要関数の導出

 さて、一度、<図2>を思い出して、黄色の部分を1にすると、次のように変形できます。

 ここで、それぞれの項、次のように解釈できます。

  • 総消費計画:px=価格×消費計画
  • 総初期保有:pω=価格×初期保有
  • 総生産計画:py=価格×生産計画

です。

3、超過需要関数の合計はゼロ

 ここで、簡略化して表記して、超過需要関数の形に変えます。

 超過需要関数とは、

  • 超過需要
  • =需要ー供給
  • =消費計画ー(初期保有+生産計画)

が、価格pによって変化することを表現した関数です。

 すると、超過需要関数(の合計)はゼロになります。

4、ワルラス法則の導出

 超過需要関数「の合計」とはなんぞ?

という疑問が出てきたと思います。

 実は上で出てきた式にはすべて1~N財についての議論をまとめてきたのですが、式的にはあまり明確にされていませんでした。

 これを明確にすると、次のようになります。

 つまり、1〜N財についてみたとき、財ごとで需給ギャップがあっても、全体の超過需要の合計はゼロになっているのです。

 これはつまり、1財からN-1財までを市場均衡させれば、自ずとN財も需給均衡に達することを意味しています。

 これでワルラス法則の証明についての解説を終わります。

5、おまけ

 おまけです。2財モデルでもワルラス法則が成り立っていることを説明しました。