国民所得の決定(45度分析)

ケインズ経済学

 価格調整がうまく働かない短期の経済において、どのように国民所得は決定されるのでしょうか?

 ケインズは「需要が国民所得を決定する」という有効需要の原理を提唱しましたが、GDP統計の枠組みで捉えることはできないでしょうか?

 サミュエルソンが考案した45度分析にて考えます。

1、需要と供給

 わかりやすさのために、貿易がないと仮定します(閉鎖経済)。

 ここでGDP統計の分類を使うと、需要供給をつぎのように考えることができます。

※モノが売れる(供給)と誰かに分配される(所得)ので、供給=国民所得となります。(三面等価の原則

※GDP統計では、在庫投資として在庫を投資に組み込むので、必ず国民所得=消費+投資+政府支出と等号成立します。しかし、ここでは投資Iに在庫投資を含めませんので、両辺は等しくならない可能性があります。

2、供給の分析

 ここで供給と国民所得の関係をグラフすると、45度の直線を描くことができます。

3、需要の分析

(1)需要の内訳

 次に需要を分析します。

に分けることができます。

 ケインズは投資を利子率で決まると考えました(投資の限界効率理論)。また、政府支出は財政政策で決まります。

 つまり、投資と政府支出は国民所得からは決定されません。

(2)消費

 一方で、消費は所得に左右されます。

 ケインズは消費を、

にわけて考えました。

 可処分所得(=所得ー税金)は国民所得Yに応じて増加するので、消費と国民所得は次のグラフのように表せます。

ケインズ型消費関数

(3)需要と国民所得の関係

 これらを総合して考えると、需要と国民所得はつぎのように考えられます。

(補足)現実のGDPの内訳

 2019年のGDPの内訳は下のようになっています。

 消費支出(民間最終消費支出)が最も大きく、投資(総固定資本形成)と政府支出(政府最終消費支出)も大きいです。

 また、現実には輸出輸入もなされていますが、差し引きすると割合的にはゼロに近くなっています。

4、有効需要の原理のモデル化

(1)45度分析

 総需要と総供給のグラフをまとめると、つぎのようなグラフになります。

45度分析

 このとき

  • 交点の国内総生産→需給均衡
  • 交点の左→超過需要
  • 交点の右→超過供給

です。

(2)需要に応じた数量調整

 企業としては、

  • 超過需要=もっと売れば得するので、増産
  • 超過需要=売れ残りで損するので、減産

します。

 こうして、国民所得は、需要に合わせて決定されます。(有効需要の原理

有効需要の原理

5、現実への示唆

 45度分析では、需要に合わせて数量調整にされ、需要と供給が均衡することがわかります。(=有効需要の原理

「そんなことがわかってなんの意味がある?」と思われるかもしれません。

 しかし、ここに経済政策の道筋がすでに準備されていることにお気づきでしょうか?

  • 投資(利子率によって決まる。利子率は金融政策で変更可能)
  • 政府支出(財政政策によって変更可能)

を通じた総需要管理政策です。

 IS-LM分析では、この効果をしっかり分析することができます。