2. 45度線分析 / 国民所得はどう決定するか?

 価格調整がうまく働かない短期の経済において、どのように国民所得は決定されるのでしょうか?

 ケインズは「需要が国民所得を決定する」という有効需要の原理を提唱しましたが、GDP統計の枠組みで捉えることはできないでしょうか?

 サミュエルソンが考案した45度線分析にて考えます。

 この記事の内容は、YouTube「有効需要の原理(45度線分析)を解説!」で解説しました。内容はブログ+アルファです。よろしければチャンネル登録と高評価お願いします!

1、需要と供給

(1)全体像

 わかりやすさのために、貿易がないと仮定します。これを閉鎖経済といいます。

 ここでGDP統計の分類を使うと、需要供給をつぎのように考えることができます。

 ここでの供給は現実支出、需要は計画支出と言ったりもします。

(2)供給

 さて、供給は財が生産された国内総生産です。これは誰かのふところにはいるので国民所得と一致します。これを三面等価の原則といいます。

(3)需要

 一方で、需要は誰かが買った額になります。支出面のGDPより、消費投資と政府支出(と純輸出)を合計したものになります。

 消費は満足のための支出、投資は将来のための支出、政府支出は政府による支出です。

 純輸出は海外からの支出ですが、閉鎖経済を仮定しているのでここでは考えません。

(4)三面等価と需給ギャップ

 さて、三面等価の原則を知っている方は、「供給の国内総生産と、需要の支出面のGDPは、定義的にいつも等しいんじゃないか?」と思われるかもしれません。

 結論から言うと「45度線分析の場合、一致しないこともあります」。

 なぜなら、45度線分析での需要は、在庫投資はカウントしないからです。

 在庫投資とは、売れ残りを「企業が将来の売り上げのために自ら買っている投資」とみなす概念です。

 結果として、需要では三面等価の原則は成り立たず、需給のギャップについて議論することが可能になります。

2、供給の分析

 ここで国民所得と供給の関係性をグラフにします。

 国民所得と供給は等しいですから、45度の線になります。

 これが45度線分析の由来です。

3、需要の分析

(1)需要の内訳

 次に需要を分析します。

に分けることができます。

 ケインズは投資を利子率で決まると考えました(投資の限界効率理論)。また、政府支出は財政政策で決まります。

 つまり、投資と政府支出は国民所得からは決定されません。

(2)消費

 一方で、消費は所得に左右されます。

 ケインズは消費を、

にわけて考えました。

 可処分所得(=所得ー税金)は国民所得Yに応じて増加するので、消費と国民所得は次のグラフのように表せます。

 国民所得ゼロでも消費は存在し、国民所得が増えるにつれて消費が徐々に増えていく右上がりのグラフです。

 

(3)需要と国民所得の関係

 消費・投資・政府支出を統合して考えると、需要と国民所得はつぎのように考えられます。

 緑が消費、黄緑が投資、オレンジが政府支出です。

 国民所得によって変動しない投資と政府支出は一定で、消費はどんどん伸びていくこと考えています。

(4)ご批判

 「ちょっと待てよ。投資や政府支出も国民所得によっても変わるだろう?いったいさっきから何を言っているんだ?」という声が聞こえてきます。

 もちろん、太平洋の小さな島国と日本での投資や政府支出の差は、利子率や財政政策ではなく国民所得が大きく影響しています。

 ですから、この声の主張は完全に正しいです。

 ただ、このモデルにもいいところがあります。

 第一に、各項目の関係主体が非常に明確であることです。

 国民によって変わる消費、金融政策によって変わる利子率と投資、財政政策によって変わる政府支出という具合です。

 この結果、経済政策について議論するための最も単純なモデルの準備になるのです。

 第二は、くだらない理由です。

 経済学部の試験、公務員試験、中小企業診断士試験に出題されるモデルなので、テスト対策になるということです。

 これらのために一度、欠点には目をつぶってください。

 経済は複雑怪奇で理解不能ですから、理解するための経済モデルではある程度の捨象は仕方ないのです。

4、有効需要の原理のモデル化

(1)45度線分析

 総需要と総供給のグラフをまとめると、つぎのようなグラフになります。

 このとき、交点の国民所得では、需給均衡が達成されています。

 交点の左側の国民所得では、超過需要に陥っています。

 右側は超過供給です。

(2)需要に応じた数量調整

 では、どのように不均衡状態は是正されるのでしょうか?

 企業としては、

  • 超過需要なら、もっと売れば得するので増産します
  • 超過供給なら、売れ残りで損するので、減産します

 こうして、国民所得は、国民所得は、需要に合わせる形で数量調整がなされ決定されます。(有効需要の原理

有効需要の原理

5、ケインズ派と新古典派

(1)疑問

 ここで、「通常の需要供給曲線でも、不均衡の是正についての議論してたような?」と思われた方、素晴らしいです。

 例えば、下のようなワルラス的市場調整の仕方を習った人もいるでしょう。

 これは価格調整によって市場均衡が達成されるというモデルです。

(2)新古典派とケインズの批判

 実はさきほどの問いは、「ケインズ派と新古典派」という近代経済学理論の2つの対立についての問いです。

 新古典派は価格メカニズムによって社会厚生が最大化することを発見するとともに、長期的には価格による需給ギャップは解消されると主張しました。

 一方で、世界恐慌より長期化する不況をみたケインズは、次のように批判しました。

 「短期的に価格メカニズムは機能しない。長期だけを考えるのは馬鹿げている。長期的には人は皆死んでいる。」

(3)ケインズ派

 ケインズ経済学は価格調整ではなく、需要に合わせて供給が決まる数量調整を理論化しました。

 これを有効需要の原理と言います。

 有効需要の原理をグラフにしたのが45度分析というわけです。

 ですから、新古典派は価格を縦軸に取り、ケインズ派は価格を一定とした上で金額表示の需要と供給を縦軸に取ったのです。

6、おわりに

 45度線分析では、需要に合わせて数量調整がなされ、需要と供給が均衡することがわかります。(=有効需要の原理

「とはいえ、そんなことがわかってなんの意味がある?」と思われるかもしれません。

 しかし、さきほどちらっと触れた通り、ここに経済政策の基本的な理解がすでに準備されています

  • 投資(利子率によって決まる。利子率は金融政策で変更可能)
  • 政府支出(財政政策によって変更可能)

を通じた総需要管理政策の理論的準備です。

 IS-LM分析では、この効果をしっかり分析することができます。

 以上で、45度線分析の解説は終わりです。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。

IS-LM分析
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しまうま
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まれびと2008
わかりやすいです!
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2030さん、は〜い笑
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こんにちは^ー^
まれびと3498
やっはろー
しまうま
3295さん、3498さん、こんにちは〜
まれびと5147
めっちゃ分かりやすい
まれびと5147
大学の先生より分かりやすい
しまうま
5147さん、ありがとうございます!ウレシイ!どちらの記事でしょうか?
しまうま
みなさまもぜひコメント残していってください
まれびと9305
正の外部性を内部化する為の補助金は、何故私的最適均衡点でなく社会最適均衡点に合わせて出されるのですか?補助金で外部経済が内部化されるのはわかりますが、初めにあった死荷重はどうなった?外部経済・死荷重にも重ならない分の補助金(右端の三角形)はどうなるんです?ご教授下さい…
しまうま
9305さん、ご質問ありがとうございます。ご質問3点は、正の外部性のページにある図4〜図8を順番に見ていただければ解決すると思います。1点目は図4〜図8、2点目は図4・図5・図7、3点目は図4・図7が対応しています。
まれびと4054
賃金に所得税が課されると労働時間はどうなるでしょうか?
しまうま
4054さん、コメントありがとうございます。結論からいえば、「場合による」が答えになります。合理的な労働者目線で、所得税課税は賃下げと同義です。単純にみれば、労働のインセンティブが減るので、労働時間が減ります※1。これがスタンダードな結論です。しかし、無差別曲線理論では、賃下げで労働時間が増える合理的な行動の存在を予想しています※2。労働曲線の後方屈曲性という現象です。例えば、時給5000円で月8時間家庭教師する東大生が、国に時給当たり所得税3000円を徴収されたら、生活水準を維持するために労働時間を増やすでしょう。もともと月4万円のバイト収入があったのに課税で1.6万円になったのでは、デート回数を減らすことになるのだから仕方ありません。これは所得税課税で労働時間が伸びる例です。他の
しまうま
賃金と労働時間に関する興味深い例(こちらは所得税とは関係ありませんが...)にはニューヨークのタクシー運転手の例があります。彼らは時給が上がると、労働時間を減らすらしいのです。面白いですよね。なお、※に対応する当ブログ記事は※1→「https://info-zebra.com/koyo-kettei/」、※2→「https://info-zebra.com/roudo-kyokyu/」です。
しまうま
みなさまもぜひコメント残していってください。近況とか聞きたいです
まれびと14623
おはよー
しまうま
14623さん、おはようございます!
まれびと16226
負の外部性の記事で、常体と敬体がごっちゃになっています。
しまうま
16226さん、ご指摘ありがとうございます。修正しました。
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<自己紹介>
 万人の共通言語となる世界観を追い求めて、ブログを執筆しています。
 
<経済学について>
【可能性】万人にとってよい社会を構想する共通言語になりうる
【長所1】個別的な議論を排し、統一的に説明する
【長所2】ゼロかイチかの極論を排し、最適点を導く
【長所3】独善的あるいは自傷的な社会通念を排し、価値観や能力の多様性を重視する
【短所】体系的な知識が必要であり、難しい

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