2. 45度線分析 / GDPはどう決定するか?

 国内総生産(=GDP)はどのように決定されるのでしょうか?

 やけに壮大な問いですので、ここで一つ考えの道筋を明確にしておきましょう。

 まず第一に、国民経済計算の枠組みを使います。

 国民経済計算とは、要はGDP統計のことです。Y=C+I+G+NXとしてマクロ経済学の基本書に必ず登場します。知らなくても心配入りません。単なる知識ですので、読めばわかります。

 第二に、「所得が需要を決定する」です。

 人は所得に応じてだいたいの消費計画が決まっています。例えば、手取り400万円のサラリーマン家庭は平均350万円ほどで生活しています。単純化のためにこれを仮定します。

 第三に、「需要が供給を決定する」です。

 経済主体は大きく需要側と供給側に分けられますが、このうち需要側に注目した考え方です。いくらいい商品がお店にあっても、お客が「商品を欲しい」かつ「お金を持っている」という状態でなければ売れません。これは有効需要の原理としても知られています。

 この2つの原理を上手く図式化したのが、45度線分析と呼ばれるものです。

 ノーベル経済学賞受賞者であるサミュエルソンが考案したものになります。

<補足メモ>

 45度線分析はわかりやすさのために次のことを仮定します。

  • 短期の経済で物価Pは固定
  • 消費は所得によって決定される(=ミクロ的基礎付けはなし)
  • 利子率は固定、投資は利子率で決定
  • 政府支出は一定
  • 閉鎖経済のため純輸出はゼロ、為替は考慮しない

1、需要と供給

(1)全体像

 わかりやすさのために、貿易がないと仮定します。これを閉鎖経済といいます。

 ここでGDP統計の分類を使うと、需要供給をつぎのように考えることができます。

 ここでの供給は現実支出、需要は計画支出と言ったりもします。

(2)供給

 さて、供給国内総生産GDPです。

 国内総生産は一定期間に国内で生産された付加価値の総額になります。

 ここで重要なことがあります。

 三面等価の原則です。

 国内総生産は、誰かのふところにはいるので国民所得と一致するという原則です。

(3)需要

 一方で、需要は誰かが買った額になります。支出面のGDPより、消費C投資Iと政府支出G(と純輸出NX)を合計したものになります。

 消費は満足のための支出、投資は将来のための支出、政府支出は政府による支出です。

 純輸出は海外からの支出ですが、閉鎖経済を仮定しているのでここでは考えません。

補足メモ:三面等価と需給ギャップの違い

 さて、三面等価の原則を知っている方は、「供給の国内総生産と、需要の支出面のGDPは、定義的にいつも等しいんじゃないか?」と思われるかもしれません。

 結論から言うと「45度線分析の場合、一致しないこともあります」。

 なぜなら、45度線分析での需要は、在庫投資はカウントしないからです。

 在庫投資とは、売れ残りを「企業が将来の売り上げのために自ら買っている投資」とみなす概念です。

 結果として、需要では三面等価の原則は成り立たず、需給のギャップについて議論することが可能になります。

2、供給の分析

 ここで国民所得と供給の関係性をグラフにします。

 国民所得と供給は等しいですから、45度の線になります。

 これが45度線分析の由来です。

3、需要の分析

(1)需要の内訳

 次に需要を分析します。

に分けることができます。

 ケインズは投資を利子率で決まると考えました(投資の限界効率理論)。また、政府支出は財政政策で決まります。

 つまり、投資と政府支出は国民所得からは決定されません。

(2)消費

 一方で、消費は所得に左右されます。

 ケインズは消費を、

にわけて考えました。

 可処分所得(=所得ー税金)は国民所得Yに応じて増加するので、消費と国民所得は次のグラフのように表せます。

 国民所得ゼロでも消費は存在し、国民所得が増えるにつれて消費が徐々に増えていく右上がりのグラフです。

 

(3)需要と国民所得の関係

 消費・投資・政府支出を統合して考えると、需要と国民所得はつぎのように考えられます。

 緑が消費、黄緑が投資、オレンジが政府支出です。

 国民所得によって変動しない投資と政府支出は一定で、消費はどんどん伸びていくこと考えています。

(4)ご批判

 「ちょっと待てよ。投資や政府支出も国民所得によっても変わるだろう?いったいさっきから何を言っているんだ?」という声が聞こえてきます。

 もちろん、太平洋の小さな島国と日本での投資や政府支出の差は、利子率や財政政策ではなく国民所得が大きく影響しています。

 ですから、この声の主張は完全に正しいです。

 ただ、このモデルにもいいところがあります。

 第一に、各項目の関係主体が非常に明確であることです。

 国民によって変わる消費、金融政策によって変わる利子率と投資、財政政策によって変わる政府支出という具合です。

 この結果、経済政策について議論するための最も単純なモデルの準備になるのです。

 第二は、くだらない理由です。

 経済学部の試験、公務員試験、中小企業診断士試験に出題されるモデルなので、テスト対策になるということです。

 これらのために一度、欠点には目をつぶってください。

 経済は複雑怪奇で理解不能ですから、理解するための経済モデルではある程度の捨象は仕方ないのです。

4、有効需要の原理のモデル化

(1)45度線分析

 総需要と総供給のグラフをまとめると、つぎのようなグラフになります。

 このとき、交点の国民所得では、需給均衡が達成されています。

 交点の左側の国民所得では、超過需要に陥っています。

 右側は超過供給です。

(2)需要に応じた数量調整

 では、どのように不均衡状態は是正されるのでしょうか?

 企業としては、

  • 超過需要なら、もっと売れば得するので増産します
  • 超過供給なら、売れ残りで損するので、減産します

 こうして、国民所得は、国民所得は、需要に合わせる形で数量調整がなされ決定されます。(有効需要の原理

有効需要の原理

5、ケインズ派と新古典派

(1)疑問

 ここで、「通常の需要供給曲線でも、不均衡の是正についての議論してたような?」と思われた方、素晴らしいです。

 例えば、下のようなワルラス的市場調整の仕方を習った人もいるでしょう。

 これは価格調整によって市場均衡が達成されるというモデルです。

(2)新古典派とケインズの批判

 実はさきほどの問いは、「ケインズ派と新古典派」という近代経済学理論の2つの対立についての問いです。

 新古典派は価格メカニズムによって社会厚生が最大化することを発見するとともに、長期的には価格による需給ギャップは解消されると主張しました。

 一方で、世界恐慌より長期化する不況をみたケインズは、次のように批判しました。

 「短期的に価格メカニズムは機能しない。長期だけを考えるのは馬鹿げている。長期的には人は皆死んでいる。」

(3)ケインズ派

 ケインズ経済学は価格調整ではなく、需要に合わせて供給が決まる数量調整を理論化しました。

 これを有効需要の原理と言います。

 有効需要の原理をグラフにしたのが45度分析というわけです。

 ですから、新古典派は価格を縦軸に取り、ケインズ派は価格を一定とした上で金額表示の需要と供給を縦軸に取ったのです。

6、おわりに

 45度線分析では、需要に合わせて数量調整がなされ、需要と供給が均衡することがわかります。(=有効需要の原理

「とはいえ、そんなことがわかってなんの意味がある?」と思われるかもしれません。

 しかし、さきほどちらっと触れた通り、ここに経済政策の基本的な理解がすでに準備されています

  • 投資(利子率によって決まる。利子率は金融政策で変更可能)
  • 政府支出(財政政策によって変更可能)

を通じた総需要管理政策の理論的準備です。

 IS-LM分析では、この効果をしっかり分析することができます。

 以上で、45度線分析の解説は終わりです。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。

IS-LM分析
交流スペース(感想など!)
まれびと114157
どこにありますか?
しまうま
114157さん、発表うまくいって何よりでございます。アメリカ史はこちらにございます。「https://info-zebra.com/usa-history/」
しまうま
[富の偏在]世界と日本における経済格差に関する新記事を公開しました。ぜひご一読ください!https://info-zebra.com/wealth-share-2020/
読者127642
読者127642
社会における学校の役割って何でしょうか
読者127642
レポートにまとめないといけないのですが、序論から思いつきません(´;ω;`)
しまうま
127642さん、コメントありがとうございます。最重要な視点は「⓪親はなぜ十分な教育を子供に与えることができないのか?」という問いです。すぐに思いつく答えは「⓪親は質の高い教育ができないから」ですが、「①昔のように家を継ぐ場合」はそんなことないですし、「②できなければ家庭教師をつければいい」のです。
しまうま
となると、①から「①現在は高度な産業社会で職業の自由があること(需要)」、②から「大人数で教育することで費用を分担する(供給)」という存在理由が見えてきます。
しまうま
しかし、なら私立学校で十分です。公立学校の存在意義を考えるには、「③教育の効果を親が過小評価しがちなので「賢い政府」が適切な教育を施す必要がある(効率性)」「④教育の効果を把握していても貧しい親は教育費用を負担できず不公平が生まれる(公平性)」というのも大きな理由です。
しまうま
とはいえ、一番書きやすいのは①でしょう。近代化による産業の高度化、公教育の開始などについて調べてみてはいかがでしょうか?
読者127642
返事がいただけるとは思ってなかったです(´;ω;`)ありがとうございます!ちなみに、先生から出されたテーマがその社会における学校の位置づけ あるいは 学校の中で生活することが個々人にとってどのように機能しているか なんですが、そのテーマから問題を探すんですか(@_@。? レポートを書くのが初めてで何もわからなくてすみません(;_;)
しまうま
いえいえ、コメントいただけると嬉しいので笑 前者のテーマでは学歴社会・産業社会・文化の継承、後者は青春の思い出・人格形成・社会人になる準備みたいな視点がぱっと思い浮かびますね。1〜2枚程度の軽いレポートでしたら割と適当に書いてよいと思います。
読者127642
1~2枚くらいでいいんですが、軽く適当にがわからなくて(´;ω;`)
しまうま
図書館の「教育」のコーナーに行って、2〜3冊くらい借りて読んでみてください。それで論点と理屈と結論が思い浮かんだら、それをレポートに書きましょう。根拠として本や統計の引用をして参考文献録をつけたらレポートの完成です。
読者127642
ありがとうございます!明日学校の図書室に行って本調べてみます(#^^#)
読者127642
しまうまさんみたいにレポートの達人になりたい…
しまうま
ちなみに大学1年生ですか?
読者127642
専門学校1年生です
しまうま
そうなんですね!慣れないレポートで大変かと思いますが、頑張ってくださいねd(^_^o)
読者127642
単位のために!これからも出るであろうレポートと仲良くなるために頑張ります!このサイト作ってくれてありがとうございます(#^^#)
読者134565
TENETの解説わかりやすかったです
しまうま
134565さん、ありがとうございます!
読者147170
うえーい
読者147784
むっずかしい
読者149700
敵があった銃弾の行方だけ分かっていないんですよね。敵の撃った銃弾は後ろ歩きしていったニールに張り付いていたことになるのでしょうか?
しまうま
149700さん、ありがとうございます。ニールは生きていますから、銃弾は貫通してドアに刺さっているはずですというのが答えになると思います。しかし、この問いはテネットの抱える矛盾の一つです。ドアが作られた時に銃弾も一緒に作られていることになるからです。同じような例が高速道路のカーチェイスにあります。ドアのミラーから銃弾が「抜かれる」ようなシーンがありますが、自動車工場でミラーに銃弾を埋め込んで製造したことになります。これは明らかにおかしいです
読者150373
回答ありがとうございます.ニールが庇ったところから貫通していたとすると主人公に結果当たってしまうのではないかといったところも気になりましたが,やはり多少の矛盾は出てきてしまうのは避けられないのかもしれませんね.事象としては理解できました.ありがとうございます.
しまうま
いえいえ、こちらこそコメントありがとうございました!
読者155126
てすと
読者155263
価値観の多様性→能力の多様性
Customize
しまうま経済学研究所
タイトルとURLをコピーしました