世の中は冗長さで溢れている。受け手の無理解を恐れて前提を共有するうちに、語り手自身が要点を見失う他、さらに自己表現の快感が語りを自己目的化するがゆえである。
その結果、メッセージの純便益がマイナスになる。メッセージがもたらす便益が、そのメッセージを理解する不快感や機会費用を上回る。この事態に際した合理的な行動は、無視である。例えば、校長先生の話、難解で読みにくい本、嫌いな人の話、専門外の論文などは、その典型である。
鋭さは簡潔明瞭なメッセージに宿る。言葉を弄さずに要点を伝達できることは、語り過ぎぬ自制心を持ち、物事の本質を見抜いたことの証明となると感じるからだ。