コブ・ダグラス型効用関数について / 経済数学

 コブ・ダグラス型効用関数(Cobb-Douglas utility function)とは、次の形の効用関数である。

$$一般形:U(X_1,X_2, \cdots X_N)=k X_1^{\alpha_1} X_2^{\alpha_2} \cdots X_N^{\alpha_N}$$

$$1財モデル:U(X)=k X^{\alpha}$$

$$2財モデル:U(X,Y)=k X^{\alpha} Y^{\beta}$$

 

 最頻出形のコブ・ダグラス型効用関数にて、予算制約下での効用最大化問題を解くと、次の答えが得られる。なお、Xが財Xの消費量、Yが財Yの消費量、Pxが財Xの価格、Pyが財yの価格、Iが予算である。(←計算は「ラグランジュの未定乗数法について」へ)

$$効用最大化問題:\max_{X,Y} U(X, Y) = X^\alpha Y ^{\beta}$$

$$予算制約:I =P_X X+ P_Y Y$$

$$最適消費計画(X,Y)=\left( \frac{\alpha}{(\alpha + \beta)P_X}I, \frac{\beta}{(\alpha + \beta)P_Y}I \right)$$

$$最適支出計画(P_X X, P_Y Y)=\left( \frac{\alpha}{(\alpha + \beta)}I, \frac{\beta}{(\alpha + \beta)}I \right)$$

 

 コブ・ダグラス型効用関数では「価格が変わっても、それぞれの財への支出割合は一定」という行動が合理的になる。例えば、X財が食費、Y財が他の財なら、α/(α+β)がエンゲル係数である。例えば、X財が住宅費、Y財が他の財なら、α/(α+β)が住宅費割合である。ちなみに、エンゲル係数は25%程度、住宅費割合は手取りの3分の1とされ、支出割合一定という性質は一部の現実を反映している。

 

【問題】

問1【1財のみ変化・限界効用】N財のコブ・ダグラス型効用関数の第1財の限界効用(MU, merginal utiliry)を求めよ。

$$U(X_1,X_2, \cdots X_N)=k X_1^{\alpha_1} X_2^{\alpha_2} \cdots X_N^{\alpha_N}$$

$$1財の限界効用MU_1=\frac{\partial U(X_1,X_2, \cdots X_N)}{ \partial X_1}$$

問2【2財のみ変化:限界代替率】N財のコブ・ダグラス型効用関数の第1財と第2の限界代替率(MRS, marginal rate of substitution)を求めよ。なお、限界代替率は、次のように限界効用の比であることを用いて良い。

$$MRS_{1,2}=\frac{MU_1}{MU_2}$$

問3【N財が変化・n次同次性】すべての財の消費量をλ(>0)倍にしたとき、効用は何倍になるか(1)。また、すべての財の消費量をλ(>0)倍にしたとき、効用がλ倍になるのはどんなときか。(2)

問4【パラメーター・k】パラメーターk(>0)が増加すると、何が変わるのか(1)。また、最適消費計画に何か影響を及ぼすか(2)。また、限界代替率=相対価格で最適消費が決定されることを用いて良い。

$$MRS_{1,2}=\frac{MU_1}{MU_2}=\frac{P_1}{P_2}$$

問5【パラメーター・α】パラメーターα1が増加すると、何が変わるのか。また、限界代替率=相対価格で最適消費が決定されることを用いて良い。

 

【回答】

問1【1財のみ変化・限界効用】N財のコブ・ダグラス型効用関数の第1財の限界効用(MU, merginal utiliry)を求めよ。

$$U(X_1,X_2, \cdots X_N)=k X_1^{\alpha_1} X_2^{\alpha_2} \cdots X_N^{\alpha_N}$$

$$MU_1=\frac{\partial U(X_1,X_2, \cdots X_N)}{ \partial X_1}$$

$$= \alpha_1 k X_1^{\alpha_1-1} X_2^{\alpha_2} \cdots X_N^{\alpha_N}$$

$$= \frac{\alpha_1}{X_1}k X_1^{\alpha_1} X_2^{\alpha_2} \cdots X_N^{\alpha_N}$$

問2【2財のみ変化:限界代替率】N財のコブ・ダグラス型効用関数の第1財と第2の限界代替率(MRS, marginal rate of substitution)を求めよ。なお、限界代替率は、次のように限界効用の比であることを用いて良い。

$$MRS_{1,2}=\frac{MU_1}{MU_2}$$

$$MRS_{1,2}=\frac{MU_1}{MU_2}=\frac{\alpha_1 k X_1^{\alpha_1-1} X_2^{\alpha_2} \cdots X_N^{\alpha_N}}{\alpha_2 k X_1^{\alpha_1} X_2^{\alpha_2-1} \cdots X_N^{\alpha_N}}$$

$$=\frac{\alpha_1 X_2}{\alpha_2 X_1}$$

問3【N財が変化・n次同次性】すべての財の消費量をλ(>0)倍にしたとき、効用は何倍になるか(1)。また、すべての財の消費量をλ(>0)倍にしたとき、効用がλ倍になるのはどんなときか。(2)

$$U(\lambda X_1,\lambda X_2, \cdots \lambda X_N)$$

$$=k (\lambda X_1)^{\alpha_1} (\lambda X_2)^{\alpha_2} \cdots (\lambda X_N)^{\alpha_N}$$

$$=\lambda^{\alpha_1 + \alpha_2+\cdots + \alpha_N} k X_1^{\alpha_1} X_2^{\alpha_2} \cdots X_N^{\alpha_N}$$

$$=\lambda^{\alpha_1 + \alpha_2+\cdots + \alpha_N} U(X_1,X_2, \cdots X_N)$$

$$よって、\lambda^{\alpha_1 + \alpha_2+\cdots + \alpha_N}倍になる。・・・(1)$$

$$すべての財の消費量をλ倍にしたとき、効用がλ倍になるのは$$

$$\lambda^{\alpha_1 + \alpha_2+\cdots + \alpha_N}=\lambdaより$$

$$\alpha_1 + \alpha_2+\cdots + \alpha_N=1・・・(2)$$

問4【パラメーター・k】パラメーターk(>0)が増加すると、何が変わるのか(1)。また、最適消費計画に何か影響を及ぼすか(2)。また、限界代替率=相対価格で最適消費が決定されることを用いて良い。

$$(1)効用水準が高まる=ハッピーになる。$$

$$(2)限界代替率に影響を与えないので、消費計画には影響を与えない。$$

$$MRS_{1,2}=\frac{\alpha_1 X_2}{\alpha_2 X_1}$$

問5【パラメーター・α】パラメーターα1が増加すると、何が変わるのか。また、限界代替率=相対価格で最適消費が決定されることを用いて良い。

$$MRS_{1,2}=\frac{MU_1}{MU_2}=\frac{P_1}{P_2}$$

$$MRS_{1,2}=\frac{\alpha_1 X_2}{\alpha_2 X_1}=\frac{P_1}{P_2}$$

$$\cdots$$

$$MRS_{1,N}=\frac{\alpha_1 X_N}{\alpha_N X_1}=\frac{P_1}{P_N}$$

$$より、パラメーターα1が増加すると、1財の消費量が増え、2〜N財の消費量が減る。$$