異時点間の消費選択(2期間モデル)について / ミクロ経済学

 異時点間の消費選択問題は、時間を通じた合理的行動の基礎となる。この記事では2期間での最適消費問題をラグランジュの未定乗数法で解く。追記では、無差別曲線、恒常所得、オイラー方程式について触れた。さて、2期間での最適消費は、次のように定式化できる。Cは消費、Sは貯蓄、Yは所得、rは利子率、下付き数字は1期、2期といった期を意味する。

$$\max_{C_1,C_2} U(C_1,C_2)$$

$$s.t. C_1+S=Y_1$$

$$C_2=Y_2+(1+r)S$$

 

 異時点間の消費選択問題は、ラグランジュの未定乗数法を用いて計算することができる。

$$制約条件はY_1-C_1-S=0、Y_2+(1+r)S-C_2=0の二つで$$

$$ラグランジュ関数Lを次のように設定する$$

$$L(C_1, C_2, S,\lambda_1,\lambda_2) $$

$$=U(C_1,C_2) + \lambda_1(Y_1-C_1-S)+ \lambda_2(Y_2+(1+r)S-C_2) $$

$$C_1, C_2, Sについての偏微分がゼロなので$$

$$\frac{\partial L}{\partial C_1}=\frac{\partial U(C_1, C_2)}{\partial C_1}- \lambda_1=0…式(1)$$

$$\frac{\partial L}{\partial C_2}=\frac{\partial U(C_1, C_2)}{\partial C_2}- \lambda_2=0…式(2)$$

$$\frac{\partial L}{S}=- \lambda_1+(1+r)\lambda_2=0…式(3)$$

$$式(1)式(2)を式(3)に代入すると$$

$$-\frac{\partial U(C_1, C_2)}{\partial C_1} +(1+r)\frac{\partial U(C_1, C_2)}{\partial C_2}=0$$

$$ここでt期の消費C_tの限界効用をMU_tと表現すると$$

$$-MU_1+(1+r)MU_2=0$$

$$\frac{MU_1}{MU_2}=1+r$$

 

 利子率は、今この瞬間にお金を使うことで発生する機会費用である。上の最終的な結果を限界代替率=価格比と解釈し、来期にお金を使う価格P2を1とするならば、現在お金を使う価格はP1=1+rであり、利子率の分だけ余計に高い。なぜなら、お金は今期貯蓄すれば、来期に投資額×利子率が儲かるからだ。なお、違う解釈もできる。今期にお金を使う価格P1を1とするならば、来期にお金を使う価格はP2=1/(1+r)であり、現在価値にすると利子率の分だけ割り引かれていると言える。この二つの解釈の差は「今期が高い」「来期が安い」の差であり、同じことを述べている。

$$限界代替率MRS_{12}=\frac{MU_1}{MU_2}=\frac{1+r}{1}=価格比\frac{P_1}{P_2}$$

$$限界代替率MRS_{12}=\frac{MU_1}{MU_2}=\frac{1}{\frac{1}{1+r}}=価格比\frac{P_1}{P_2}$$

 

【追記】

無差別曲線でも論じてみよう。貯蓄する場合の2期間の効用最大化問題は次のように表すことができる。

 

借金をする場合、次のように論じられる。

 

金融機関は社会厚生を増大させるか→増大させる

 

マイナス金利に対する反応

 

恒常所得を導出してみよう。予算制約でSに注目すると

$$C_1+S=Y_1、C_2=Y_2+(1+r)Sより$$

$$C_2=Y_2+(1+r)(Y_1-C_1)$$

$$C_1+\frac{C_2}{1+r}=Y_1+\frac{Y_2}{1+r}$$

となる。ここで右辺は、所得Yの現在割引価値の合計と解釈できる。これが恒常所得である。

$$Y_1+\frac{Y_2}{1+r}≡Y$$

 

・異時点間消費についての重要な関係式であるオイラー方程式を導出してみよう。全期間を通じて得られる効用は、1期から得られる効用、2期から得られる効用に割引因子βを掛けた効用の和と見なすことができる。

$$U(C_1,C_2)=u(C_1)+\beta u(C_2)$$

この場合、式(1)(2)(3)は次のように書き換えられ

$$\frac{\partial L}{\partial C_1}=u'(C_1)- \lambda_1=0…式(1)$$

$$\frac{\partial L}{\partial C_2}=\beta u'(C_2)- \lambda_2=0…式(2)$$

$$\frac{\partial L}{S}=- \lambda_1+(1+r)\lambda_2=0…式(3)$$

$$式(1)式(2)を式(3)に代入すると$$

$$-u'(C_1) +(1+r)\beta u'(C_2)=0$$

$$u'(C_1) =(1+r)\beta u'(C_2)$$

 最後の式は、今期の限界効用は、1期後の限界効用に(1+r)βを掛けたものと等しいことを意味する。最後の式はオイラー方程式と呼ばれる。

意思決定
しまうま

しまうま総研管理人
20代男性/神奈川出身/東大卒
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